2018年4月20日金曜日

「人事制度」が本当に役立っているのかと考えてしまったこと


つい先日、あるカフェでのことです。
隣の席の男性は、どうも人事の期末期初の部下面談をしているようです。最近は社内ではなく、こういうオープンな場所で話していることは結構多く、私もそんな光景にたびたび遭遇します。
この手の話はどちらかといえば社内の誰かに中身を知られる方が問題になりますし、特に社外に向けた機密情報というわけでもありませんので、あえてそうしていることがあるようです。

話していた内容は、前期の評価にかかわること、目標管理のこと、役割期待のことなどで、制度に則ってきちんと評価している様子も、部下への気遣いも、反対に言いづらいような苦言のたぐいも、それぞれきちんと伝えています。人事制度の運用というのは、ともすれば手を抜いたり適当にお茶を濁す上司がいたりするものですが、そんなことはまったく感じさせない真面目な上司に見えました。
この上司はその週は面談ばかりが詰まっているらしく、「やっと4人終わった」などと言っていたので、全部で何人に対応するのかはわかりませんが、まだしばらくこの感じが続くのでしょう。

ここで、話している様子を見ていて私がちょっと気になったのは、上司の方が会話の8割方を話し続けていて、部下の人はそれを淡々と聞いているばかりだということです。部下はたまに相づちを打ったり、聞かれたことに一言二言答えたりという感じで、特に反論する人がいるわけでもなく、かといって建設的な話が広がるわけでもなく、上司からの伝達中心の面談が続きます。部下の人は時間ごとに入れ替わっていきますが、面談の進め方はほとんど変わりません。

こういうことは、正直ありがちなことではあります。上司は所定の評価表に基づいてそれをしっかり記載している様子がわかるので、その作業には結構時間がかかっているはずです。さらに限られた時間で全員に対する面談をやってその結果を説明しなければならないとなれば、段取りよく急いで進めなければなりません。
そうなると、自分が言いたいことをとにかく伝えることに集中して、相手の話を聞くことが主眼ではなくなります。面談というよりは伝達に近く、目標を共有するとか、やる気を促すといった感じではなくなります。そもそも手続きや対応する人数が多くて、真面目にやろうとすればするほど時間が足りないのです。

そんな様子を見ていると、これが本当に社員のやる気やエンゲージメントを高めるのか、生産性が上がって業績向上に結び付くのかということを疑問に感じてしまいます。これは間違いなく従来からの人事制度に起因する問題です。
決められた通りに、せっかく多くの時間を使って真面目に取り組んでいるのに、何かその努力が報われていないように見えます。

最近は「ノーレイティング」といって、年度単位の業績などによる社員のランク付けを廃止する企業が欧米を中心に増えてきました。給与の決定方法などを簡素化するかわりに、上司と部下が綿密な1対1のミーティングをおこなう時間を増やすなどして、より実質的な効果を得ようという取り組みです。
上司の大変さはあまり変わらないかもしれませんが、効果が上がるところに注力することができます。

実際の面談の様子を見ていて、人事制度は従来からのやり方を見直していかなければならない時期に来ていることを実感します。


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