2018年1月29日月曜日

「一律管理」の発想はもう捨てなければならない



ある会社の社長と、評価制度の話になりました。
その社長は、できるだけ明確な評価基準を作って、それをもとにみんなが同じ目線で評価され、評価する側が誰であっても結果がばらつかないものが理想だといいます。
人間がやることなので、さすがにそこまでは無理だとしても、その理想に少しでも近づけるような仕組みを作りたいのだと言っています。できるだけ一律に管理ができるものが、公平だし効率も良いので望ましいとのことです。
こういった「一律管理」を志向する話は、一部の経営者からではありますが、ずいぶん昔からたびたび聞く機会がありました。

この話に関して、社長がそう思う気持ちは理解しつつも、私ははっきり「無理だ」と言いました。同じ時間に同じ環境でこなす単純労働を人間が担っていた時代ならともかく、それとはもう大きくかけ離れた時代になっているからです。
別々の人間の行動に枠をはめて見るということは、それ以前から難しいことではありましたが、一層複雑化した今の環境の中では、その難易度がどんどん増しています。

例えば、社員の働き方として、かつてはみんなが正社員で同じ就業時間帯、同じ休日で働き、結婚した女性は退職して専業主婦になるのが当たり前という時代がありましたが、そんな話はもうとっくに終わっているだけでなく、そこからさらに大きな変化を遂げています。
今は正社員に非正規社員、短時間勤務、地域限定、フリーランス、在宅勤務、さらに育児や介護での制約など、様々な人が多種多様な形態で同じ職場で働いており、6割近い世帯が夫婦共稼ぎで、必ずしも週末休みではない人が増え、フレックスタイムや裁量労働という人や、シフト制で毎日異なる時間帯で働く人がおり、さらに最近は朝型勤務などを導入している会社もあります。

また、前述したような企業の評価制度の中でも、一律の年次評価による序列づけをやめて、個々の社員に注目した新しい目標管理プロセスを導入するような会社が出てきています。とにかく流れは「一律化」ではなく「多様化」なのです。

現代の経営環境や、個人を取り巻く状況を表現するキーワードとして、「VUCA(ブーカ)」というものがあります。
Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)という4つのキーワードの頭文字から取った言葉で、現在はとにかく「予測不能な状態」だということになります。

将来の予測が難しいとなれば、その場で起こったことに適応していくしか方法はありませんが、そんな複雑な環境の中で、一律化、単純化した手法を持ち込むのは、適応力という点でもかなり危険なことです。

人事制度に限らず、会社の中での様々な仕組みは、これからも絶対に必要ですし、効率化を考えた取り組みも同じく必要ですが、同時にこの多様化、複雑化ということには対処していかなければなりません。
少なくとも、かつての「一律管理」の発想は、もう捨てなければならない時代になっています。


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