2017年12月27日水曜日

「パソコンができないIT志望者」の話で思うこと



先日SNS上で「パソコンができないのにIT業界に来る若者」という投稿が話題となりました。

「IT業界に来る新人さんでも、今までパソコン触ったことない層はいる」と指摘していて、「知らないことはこれから学べばよいから、そのこと自体が悪いわけではない」としつつ、「マウスの持ち方やダブルクリックの仕方からスタートするのは、教える方も教わる方も大変」と言っていて、その要因には「IT業界の売り手市場の状況」が挙げられていました。

これについて、そういう若者がいると共感する意見や、とにかく就職させようとする環境を批判する意見がありました。
私の周りで個人的に話を聞いたある人は、「特別な職人などではなく一般企業で働く限り、今はどんな業種でもパソコンを使わずに済むところはないから、初歩的なパソコン操作くらいは身に着けておくべきだ」と言っていました。確かにそれはその通りです。

ただ、私はこういうことは「多くのことを望みすぎ」というふうに思っています。
これは当然“教える側”が大変になるわけですが、最近はその大変さを“教わる側”の責任に押し付けているように見えることが数多くあるからです。
いくら教えても思い通りにスキルが高まらないとき、“教わる側”の能力を見切るような話になることはありますが、“教える側”の教え方が責められることは、あったとしてもとても少ないです。

もともとは私もIT業界に新卒で入り、8年ほど技術の仕事をしていましたが、その当時は家にパソコンを持っているような人はほぼおらず、私も入社するまでキーボードに触ったことすらありませんでした。
もちろん新人研修があって、そこで必要な一通りのことを教わりはしましたが、すべてのことまで行き届いていたわけではありませんし、結局は仕事をしながら実務の中で学んでいったというのが実際のところです。

現在ではそんなスピード感ではだめだという話で、企業はとにかく一定レベルまで促成栽培をしようと、資格を取らせたり厳しめの内定者教育をしたりします。採用段階でスキルや資格を要件にすることもあります。
厳しい競争の中で、これらは仕方がないことですが、どうもそれがどんどんエスカレートしている気がして、その責任が“教わる側”ばかりに偏っているように思います。会社が短期的なものを求め過ぎで、それに合わせて“教える側”は見切りが早く、“教わる側”はレベルを求められ過ぎている感じがします。

IT業界の志望者であれば、パソコンができないよりはできた方が良いです。同じように料理人志望は包丁が使えた方が良いし、接客業ではマナーが完璧な方が良いです。ただ、そこでどんなレベルを求めるのかは会社によってまちまちでしょうし、身に着けているものが自己流であれば、それは直さなければなりません。
何より問題と思うのは“教える側”の責任が軽くされてしまっていることです。

私は始めの投稿者が言っていた「知らないことはこれから学べばよい」が本質ではないかと思います。
人材育成には手間も時間もかかることを、今一度思い出す必要があるのではないでしょうか。


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