2017年12月11日月曜日

「ワークライフバランス」の個人差



ある経営者と話していて、ワークライフバランスの話になりました。この人は最近の残業上限規制などについては、「大きなお世話」だと思うそうです。
もう少しくわしく言うと、この社長は「自分の会社では、たくさん働く人は働くし、そうでない人はそれで十分に役割を果たしているし、それに対する強制も無理強いもいっさいない」「それを一律に時間だけで縛ろうとするのは、働くことが好きでもっと働きたい人の志向を奪う」「結局全体の生産性を下げてしまうのではないか」ということでした。

この残業規制にまつわる話で、「働きたい人が働けなくなる」「仕事が好きな人からそれを取り上げてしまう」という意見は、結構いろいろな場所で耳にします。確かにそういう側面はあると思います。

これは私自身のことですが、独立して仕事をしている立場で言うと、「仕事をしている」といえる時間は、会社勤めの頃よりも確実に長くなっています。真夜中の変な時間や土日などの週末に作業していたりします。
ただ、その時にやっていることが仕事か否かという切り分けは、とてもしづらくなっています。今が仕事かどうかがわかりづらい人付き合いや会合、作業という時間は結構たくさんあります。他人から見れば仕事でも、本人の精神的には仕事ではないということもあります。顔見知りとの飲み会だけど、話の中身はほとんど仕事というようなときはそんな感じです。

ですから、私が誰かに「労働時間は何時間?」と聞かれると、本当にものすごく困ります。「ちょっとでも仕事の要素がある時間」をすべて含めると相当な長時間労働になりますし、それを「自分が仕事と思ってやっている時間」にすると、意外に世の中で言われる“適正な労働時間”になりそうに思います。
やはり一番大きいのは、すべてのことを自分に意思に基づいてやっているということで、だからあまり労働時間を気にしていないのでしょうし、もしそうでなければ、どんなに短時間でもたぶん相当つらいだろうと思います。

これは私の個人的意見ですが、残業上限規制ということで言えば、私は導入に賛成です。確かにそんなものが必要ない人はたくさんいますし、それで仕事を奪われたと思う人がいることも理解しますが、そこで一番の問題は、本当の意味でそれが「自分の意志」に基づいているのかということです。

私などは自分の意志で時間を使い、自分の意志で働いているので、何かよほどの特殊事情でもない限り、過重労働になることはありません。
ただし、同じような独立事業者であっても、みんながみんなそうではありません。顧客との力関係がいびつだったり、発言力がない弱い立場になってしまったりすると、「自分の意志」とは言えない内容の仕事はたくさんあるでしょう。

また、これが企業に雇用されている人であれば、さらに話は変わってきます。自分の裁量余地がない状態で誰かの指示命令を受けて仕事をすることや、自分の意志に反したことをしなければならない状態がどこかで必ず出てきます。中には「仕事とはそういうもの」「そうやって仕事を覚えていく」「つらい仕事を経験することで耐性がつく」などという人がいますが、そのすべてを否定はしないものの、人が感じるつらさというのは決して一律ではありません。

単純な時間数でいうのはあまり適切ではありませんが、例えばつらくて仕方がない月10時間の残業も、全然気にならない月50時間の残業もあります。これが月80時間、100時間などとなれば、また健康上の問題もあるので少し状況は違いますが、それでも平気だという人もいますから、このあたりの個人差というのはとても大きいものがあります。

私は残業の上限規制については、結局は個人の意思に反した長時間労働が多くの企業で常態化し、そのせいで健康を害したり、不幸にして亡くなったりしてしまうような人がたくさんいるという現状があるからおこなわれるのだと思っています。それくらい「自分の意志」に基づかない仕事があるということで、これは企業の自業自得だと思います。

ワークライフバランスには、確かに個人差があります。ただ、その個人差が本人の意志に基づいた形になるまでには、まだしばらく時間がかかりそうです。


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