2017年11月1日水曜日

ピーターの法則の「無能」と「有能」の境目をどうやって知るか



ある記事で最近あらためて目にしたものに、「ピーターの法則」というものがあります。

これは教育学者のローレンス・J・ピーター氏が著書の中で提唱した社会学の法則で、以下のようなことが述べられています。
・有能な人も、昇進し続けるといつか能力の限界に達して「無能」になる
・「無能」となった時点で昇進が止まって今のポストに留まり、その結果どの階層も無能な人たちばかりになってしまう。
・仕事はまだ無能なレベルに達していない人によっておこなわれている。

会社であれば、例えば課長の地位で止まっている人は、「課長の能力」を満たしていないからそのポストにとどまっているのであり、「課長の能力」を発揮した人であれば、すでに次の段階に出世しているはずだといっています。
また、昇進し続けるといつか無能になるというのは、必ずしも上位職制の仕事が難しいという訳ではなく、昇進の前と後とでは仕事内容や求められる能力が異なるため、それまでの経験が生かせないからだということでした。

こうなってしまうことを防ぐための対応策というものも述べられていて、その概略はこんなことでした。
・昇進した後「無能」となった場合には、一度降格させる。
・次の段階の仕事に必要な能力が身につくまで昇進を控える
・有能な人を能力が発揮できる地位に固定する。

他も見ていくと、ある欠点を際立って見せるなどして昇進の打診が来ないようにすれば有能な状態を維持できるとか、昇進のデメリットを考えることで今の立場で満足するだとか、本人の意識で避けられるような話も挙げられていました。

しかし、そもそも昇進というのは基本的に会社が決めることで、それは社員に少しでも上位の役割を担ってもらって、より多くの価値を生み出してほしいと考えるからです。初めから無理だとわかっている人に、今までよりも上位の役割を任せようとはしませんし、こなせるだろうという期待のもとに昇進させているはずです。昇進を慎重に考えるとは言っても、そういつまでも待ってはいられません。

また、多くの有能な人材がポストの空きを待っているような、人材豊富な大企業であれば話は別ですが、少ない人数で組織を回すことが多い中堅中小規模の企業では、荷が重い、能力が足りないかもしれないと感じながらも、任せられる人材が他にいないということも多いはずです。
あるべき姿ではありませんし、部下に迷惑をかける可能性はありますが、それでも昇進させなければならないこともあります。

昇進を慎重に考えすぎて多くの時間を要すると、それは会社にとっては停滞でもあります。価値が伴っていれば、会社も社員の早い成長、昇進を望んでいます。ただ慎重に進めるだけとはいきません。

この「ピーターの法則」で言われているように、有能な人もいつかは無能な領域に行き着くのであれば、そのぎりぎりの境界線がどこかを探っていく必要があります。しかし、それを前もって見極めることはなかなか難しく、実際にやらせてみなければわからないことが多いでしょうし、見込み違いもたくさんあるでしょう。結局は、やらせてみなければわからないというのが本当のところで、その結果をみて判断するしかありません。

こうやってみてくると、私は昇進を慎重に見極めるというよりは、実際にやらせてみて能力的に足りなければ、そこで躊躇せずにもとの役割に戻す、もしくは能力が発揮できそうな他の役割に切り替えるということを、もっと大胆にやればよいと思っています。それも部下への悪影響などが出ないように、極力早くです。

その人の能力が最大限発揮できる「無能」の一歩手前を探るには、多少の試行錯誤が必要です。
一度昇進したものを元に戻すとなると、「降格」といわれて悪いイメージで扱われますが、有能さを維持するためと考えれば、それはそれほど悪いことではありません。
それがその人の最大能力を見つけるために必要ならば、抜擢も降格ももっと思い切って取り組んでも良いのではないでしょうか。


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