2017年3月3日金曜日

全員が競争して上を目指さなければだめなのか



これは、「企業の業績を上げる」「事業を発展させる」ということを支援、協働する立場であるコンサルタントの考え方としては、あまり好ましくないのかもしれません。ただ、企業で働く多くの人たちを、人事という視点から見ていていつも考えてしまうことです。

それは決してエースでもエリートでもない、普通にコツコツ働いている、言葉は良くないですが「その他大勢」と言ってもよい人たちのことです。
どちらかといえば上昇志向が強くなく、あまり競争を好まないという人たちです。

たまにさぼったり、物足りなかったり、期待通りではなかったりしますが、その人なりの役割を担っていて、おおむね真面目でごく普通に働いています。

管理職などの立場になる人もならない人もいますが、そこまで目をかけられるわけでもなく、どちらかといえば現場に近い立場での仕事をこなします。
努力しているとまでは言えないが、かといって努力していないわけでもない、すごい成果が出ているわけではないが、全然ないわけでもない、評価で言えば中の中から中の下くらいというようなイメージです。

こういう人の中には、競争した結果そうなってしまった人、出世欲は満々でもそれがかなわない人もいますが、私が接する多くの人たちは、それほど出世欲があるわけではなく、今より上にという気持ちがなくはないが、人を蹴落とすような気持ちはさらさらなく、仲間と良好な関係を作りながら仕事をしようとします。

こんな普通レベルで中くらいの人たちが、実態以上に低い価値で見られているのではないかと思うのです。

ある経済雑誌のウェブサイトに「今日の名言」というコーナーがあり、著名な企業の経営者を中心に、語られた言葉が毎日掲載されています。
その中から、あえて上昇志向を意識していると思われる言葉をピックアップしてみました。あくまで私の偏見ですが、こんな言葉が出ていました。
「もう一段上を目指す」
「真剣勝負」
「ぬるま湯体質の脱却」
「ナンバーワンにこだわる」
「成長し続ける」
「戦闘モード」
「戦う」
「チャレンジの炎」
「金メダル」
「勝利」
「成功」

これを見てあらためて思うのは、経営者をはじめとした企業のトップに近いリーダーというのは、上昇志向が強くて、競争が好きでなおかつ得意な人たちが多いのだということです。
そもそも資本主義経済は競争が基本であり、競争に負けることは退場させられることを意味しますから、こういう思考でなければ成り立たないということは確かでしょう。
ただ、企業の中には競争が必ずしも得意ではない、またそういう競争には興味がないという人たちがいます。私が見てきた中では、こちらの方が多数派ではないかと思います。

ある会社で、人事評価の結果がかれこれ15年以上ずっと標準のC評価だというような人がいます。会社の評価制度の一面として、上昇志向と競争心をあおるという側面がありますが、それには乗ってこないような人です。
会社の仕組みで決められているので仕方がないことではありますが、こういう評価を半ば事務的にし続けることに、果たして意味があるのだろうかと思ってしまいます。

私があまり良くないことと思っているのは、上昇志向や競争心を持つ人は、それを持たない人を軽蔑したり無能扱いしたりする傾向があるということです。しかし、上を目指そうとする人が必ずしも有能とは限りませんし、そんな人はパワハラ上司になりやすいということも感じます。

最近言われる「多様な働き方」の中には、こんな仕事への向き合い方に関する個人差も含まれるはずです。
「競争を好まない」「上を目指さない」という人であっても、その人に合った動機付けができ、活かすことができる職場にしなければなりません。上を目指さない人でも、決して無能ではありません。

日常の仕事の場で、「常に戦いだ!」などと言われてしまうと、さすがの私も違和感を持ってしまいます。人それぞれの職業観は、もう少し尊重する必要があると思います。


1 件のコメント:

  1. 小笠原さん、私の自論ですが、企業には①卓越した先見性・経営戦略を発揮するカリスマ的経営者(1%以下)②経営戦略を受けて事業戦略に落とし込める人(5%)③事業戦略を実現実行マネジメント出来る番頭役(10%)④きちんと働く人70% ⑤足を引っ張っている人(10%)…企業の規模に依り数字は変わるでしょう。でも組織とはそんなものと考えないで理想を追っても難しいものです。但し多分に日本的な表現であり、欧米流のグローバル化社会や年功序列から成果主義、役職定年の早期化など多くの要素で大きく変化しつつある時期ですね。

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