2016年9月30日金曜日

うまくいくほどネガティブになる日本人?



あるテレビ番組での内容ですが、「うまくいくほどネガティブな感情を持つのは日本人だけ」なのだそうです。確かに「勝ってカブトの緒を締めよ」などといい、成功したり戦いに勝ったりしても気をゆるめず、さらに心を引き締めて謙虚になるようにと戒められます。

日本人的な感覚からすると、それは良いことで当然のようにも思いますが、勝っていて昇り調子の時にさらに上を目指そうとしない、うまくいっている時に、さらにそれ以上うまくいくとは考えようとしないと見れば、それをネガティブと言われても仕方がないのかもしれません。

番組では、日本人がなぜこういう思考パターンを取るのかという理由も語られており、それは「災害多発の国土であったから」ということでした。常に災害が起こった時のことを考えて、その準備を怠らなかった人が生き延びてきた民族であり、それがDNAに刻み込まれてきているために、他国の人からすると異質な考え方を持つようになったのだということでした。

このように「常に先のことを心配している」という話を聞くと、消費が伸びないとか投資が増えないとか、一般の人たちの経済活動につながっている感じがしますし、喜びを表現するのが控え目だったり、褒められても疑心暗鬼で素直に受けとめられなかったり、いい話でも何か裏があると思ってしまうようなところがあるのは、そういう深層心理が影響しているのだと、妙に納得してしまいました。

こんなことから思ったのは、かつての終身雇用、年功序列、退職金といった日本の人事制度は、「先の心配を減らす」ということでは、この日本人の心理にはかなりフィットしていたのではないかということです。

これらの人事制度は、働いて生み出した結果とは関係がないところで処遇が決まるという部分があるので、右肩上がりがずっと続いているような企業でなければ維持できないでしょうし、資本主義の基本的な考え方とは相いれないものでしょう。

そんなことから、企業の人事制度は成果主義の導入であったり、時価精算の考え方を強めたりという流れがありますが、そういう変化を「将来不安の増加」としてとらえ、日本人のDNAとして、その捉え方が過剰なのだとすれば、節約、倹約、貯蓄で備えようとなってしまうのは、当然の準備、防御行動ということになります。

「将来不安」の中には、仕事への不安、収入不安、健康不安、老後の不安、その他いろいろな種類があります。経済の活性化、景気回復のためには、「将来不安の軽減」が必要だと言われ、海外の事例もいろいろ持ち出されますが、日本人のDNAに過剰な将来不安があるのだとすれば、相当大胆なことをしなければ、なかなか変わらないようにも思います。

これは個人的な意見ですが、やはり失業、医療、貧困といった部分でのセーフティーネットを、さらに整備していくことが必要なのだろうと思います。
もちろんそこには、国の政策だけでなく、企業でも個人でもできることはあるはずです。

2016年9月28日水曜日

カルビー会長の「4時に帰れ」の命令で思う、実はシンプルかもしれない長時間労働対策

あるウェブサイトで、カルビー 松本晃会長のインタビュー記事を目にしました。 
「ダイバーシティ」が話題の中心で、特に女性活躍について語られているものでしたが、ある女性を、社員約900名、売上400億以上の事業本部のトップにするにあたって、「何でもいいから4時に帰れ」という命令を与え、それができないなら会社を辞めるか職を辞退するかというふうに迫ったそうです。 

その女性には当時小4と小1の子供がおり、ダイバーシティは働き方改革も同時に進めなければ実現しないと考えから、こういう命令をされたようです。この女性事業本部長は、今もその命令を忠実に守っているそうですが、何も問題が起こったことはないそうです。 

松本氏は「会社にベンチマーキングを作れば変わる」とおっしゃっていて、働き方改革で最初に言ったのはとにかく早く帰れ」「時に帰れ」「終わったら帰れ」ったそうです 
今は「会社なんか来るな」と言っていて、ともかく、今はツールが揃っているので仕事毎日オフィスに来る必要はないということだそうです 

長時間労働や残業対策に悩んでいる会社は多く、私も相談を受けることがありますが、多くの会社で見られる基本的な考え方は、「残業には必要なものとそうでないものがあり、減らしたいのは不要な残業であり、必要な残業はしてもらわなければ困るということです。 
要は長時間労働やむを得ない場合は必要と認めており、それを仕事の中身選別しようとしていて、それ周りから見極めることが難しいので、残業なかなか減らないということです。 

ただここで会長や社長といった会社のトップが時間数にコミットして、とにかく早く帰れ」と言い続けたとしたら、現場はその方針に基づいて動かざるを得ません。 
特に日本の場合は、もともとの文化として、長時間労働を称賛するようなところがあります。朝早くからご苦労様」「遅くまでお疲れ様」という言葉がかけられるということは、長い時間働くことが美徳でよいことだという深層心理があるからで、これは多くの経営者心理でも同じだと思います。 

表面的には「早く帰れ」「効率的に」などと言っていたとしても、本音の部分では違っていたりしますから、そのニュアンスは社員にも伝わり、どんな施策をとったとしても、その徹底度は薄れてしまうでしょう。 

このカルビーの例を見て思ったのは、長時間労働対策というのは実はシンプルなことで、経営者が気になって、そのことを本気と本音で言い続けるということだけなのではないかということです。 

部下には「早く帰れ」と言いながら、自分はいつまでも残って仕事をしている経営者や管理者は大勢いますし、そもそも長時間労働をしなければ、仕事は回らないし業績も下がると思っている人もたくさんいます。 
また、受注型や請負の仕事では、顧客都合に引きずられて、労働時間を減らすことが難しい事情もあります。現場としては業績責任もありますから、それを考えるとどうしても顧客事情が優先されてしまうでしょう。 
こういう意識や環境のままで残業規制をしても、実際にはサービス残業が増えたりするだけで、あまり効果が上がらないことも多いです。 

んな状況をみていると、現場レベルの作業管理やマネジメントだけで残業問題を解決することはできそうにありません。顧客との交渉、作業効率化のための投資、業績低下が起こった場合の責任引き受けなど、会社全体の責任を負える人が先頭に立たなければ難しく、それができるのは経営者だけです。 

その昔、毎週日曜の1だけの休みから週休2日に移行した時期がありましたが、その頃の企業業績が全面的に低下したかというと、そんなことはありませんでした労働時間と業績は、必ずしも比例しないということです。 

人口減少の中での人材活用を考えると、長時間労働への対策は必須です。そこで最も効果的な対策は、実はとてもシンプルで、「経営者が先頭に立って、取り組みを徹底する」ということではないかと思いました。 

2016年9月26日月曜日

「積極採用」と「厳選採用」との間のバランス



成長基調で事業が拡大している企業の場合、特に最近は人手不足の傾向が顕著に表れています。
積極的な採用活動を展開していても、望ましい人材がなかなか確保できません。そうなると、どうしても採用人数を優先しがちになってきます。決して基準を下げているつもりがないにもかかわらず、無意識のうちの徐々にそうなっているケースもあります。

そんな「積極採用」の時によく見られるのは、応募者に対する「善意の解釈」です。
「ちょっと気になるところはあるが、たぶん何とかなるだろう」
「ちょっと能力は足りないかもしれないが、教えれば何とかなるだろう」
「直接の経験はないが、この経験が応用できそうだから大丈夫だろう」
というような感じです。

そして、こういう判断をした結果として、総じてよく見られるのは「やっぱり最初に心配した通りで、何とかならなかった」という状況です。これはあくまで私が経験してきた中での個人的な感覚ですが、初めに心配したことが結局当たっていたという確率は、7割8割という感じであるように思っています。

こうなると、本人も仕事がつらい、向いていないという状況を自覚するので、多くが辞めていってしまいます。会社としてはさらにまたその人員の補充もしなければならなくなり、俗に言われる「ザルで水をすくう」という悪循環に陥ります。採用活動の労力とお金ばかりがかかり、結果があまりついて来ないということです。

ただ、これも私が見てきた経験でのことですが、成長していく企業には必ずこういう時期があります。知名度は低く応募者を集められない、でも人は欲しいという環境の中で「積極採用」を行う会社では、一度は通らなければならない道なのかもしれません。

それでも、どうにかこうにか人を増やしながら、こういう活動を何年か続けていると、会社の中では徐々に疑問が湧いてきます。「こんなやり方はお金と労力の無駄ではないか」「やはり採用基準が甘いのではないか」ということです。
こうなってくると、今度は今までのやり方では効率的ではないということで、特に“量より質だ”という方向が強まっていきます。俗に言われる「厳選採用」へのシフトです。

採用スタッフの体制を強化し、今までよりは厳し目の採用基準で、「善意の解釈」はやめるという形になっていくことが多いです。
そうなれば当然、今までのような採用人数は維持しづらくなりますから、特に現場の人手不足感が強い場合は、「もっと人数確保を!」という圧力が強まってきます。

そして、ここから先は、企業によって「もっと数」なのか、「もっと質」なのかの判断は異なってきます。その時の会社状況によって、「積極採用」と「厳選採用」との間で、バランスを取り始めます。 

企業の採用活動で、数と質のバランスを取ることなど、当然のことだと思われるかもしれません。ただ、自社にとっての最高の「積極採用」と、最高の「厳選採用」の両極端を経験しなければ、その間にある、その時その時の適切なバランスを見つけ出すことは、なかなかできません。

人事の課題解決は、どんなものでもそうですが、会社としての経験の積み重ねが必要です。