2016年12月26日月曜日

「向いていないし好きな仕事でもないけど辞めない」という新人の話




ずいぶん前から、新入社員の早期離職は「753現象」などといわれて問題視されています。
入社3年以内に中卒の7割、高卒の5割、大卒の3割が離職する現象のことですが、このこと自体は最近始まったことではなく、統計資料などによれば30年以上前から同様の傾向が見受けられています。
ただ、このところ少子化に伴って若手の採用が難しくなっていることもあり、「せっかく苦労して採用した人材に、それなりの教育投資をしたにもかかわらず、簡単に辞められては困る」ということから、企業側の問題意識は高まっており、今まで以上に取り上げられることが多くなっているように思います。

ただ、ある有名企業の方から聞いた話で、ちょっと考えてしまうことがありました。
ある一流大学から入社した新入社員だそうですが、すでに現場では「仕事ができない」「やる気がない」「使えない」という評価をされてしまっていて、扱いを持て余しているのだそうです。
当の本人も「自分はこの仕事には向いていない」「好きな仕事ではない」と言っていて、適性がないことを自覚しているようですが、それでも「会社は辞めない」のだそうです。
その理由は「もしかするとこの仕事が好きになるかもしれないから」だそうで、周りから見ると、有名企業のブランドもあるせいか、会社にしがみつこうとしているようにも見えるようです。

そして、「会社は辞めない」と言いながらも、仕事ぶりは相変わらずで、あまりやる気を見せることもなく、積極的な取り組みをすることもなく、いかにも「向いていない」「やりたくない」という様子だそうです。
さすがに周りの人たちは、「もっと自分の適性を活かせる他の仕事を探しては」という話も、ついついしてしまうそうですが、本人にその気はないようです。

これはそもそも適性がない人材を採用した会社にも問題がありますし、まだ新人だからもっと長い目で見て育成するべきという意見も、もっともな話でしょう。頑張っていればいつか花開くという可能性もゼロではありませんし、苦手なことでも続けるという精神性には意味もあるでしょう。会社への定着ということを第一に考えれば、「辞めない」ということは悪いことではありません。

私もこういう見方を否定はしませんが、この話で問題なのは、本人が「この仕事は好きではない」「自分は向いていない」と言っていて、なおかつ自分から立ち向かおうという姿勢がないことです。「何となく続けていれば、そのうち慣れるかもしれない」という安易な態度も感じます。

給料が高いわりに仕事をしない、業績貢献がない、さらに転職しても仕事は大変になって、給料も下がるだけだから会社にしがみつくという中高年社員を指して、「働かないおじさん」という話がありましたが、仕事に向き合うことを避けるという意味で、私はこれと同じようなことを考えてしまいました。

人材投資という面では、世代を問わずに「早期離職」は問題ですが、行動としては正反対の「会社にしがみつく」ということも、同じように問題です。
「つらくても続ける」「向いていなくても辞めない」は、一見すれば真面目な取り組みに見えますが、そうでない場合が含まれることも知っておくべきです。


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