2016年11月23日水曜日

アンケート結果は「研修の成果」を反映しているのか?



ある携帯キャリアショップが、後日本部から送られるアンケート調査について、「結果が悪いと指導を受けてしまうので、“大変満足”と回答してほしい」との指示文書を配布していたという話題がありました。
「非常に良い」「大変満足」というような最高点の評価でなければ不合格で、本部から指導を受けることがあるのだそうです。

「これではアンケートの意味がない」「そこまでして高評価が欲しいのか」といった批判が集まっているようですが、私個人の意見としては、つい気軽に書いてしまうこともあるアンケート結果を、評価資料としてショップ側がおびえてしまうほどまでに厳しく一方的な使い方をするということには、かなりの疑問を感じます。

本当の意味での評価をするためには、覆面調査や抜き打ち調査などで現場の様子を直接見ることが必要だと思いますが、本部としてはそこまで手をかける余力もなく、そうなるとアンケートくらいしか得られる情報がないので、ここまでウエイトが高く位置付けられてしまうのでしょう。

実はこれと同じような話を聞いたのが、企業で行う研修においてのことです。
あるコンサルタントの方からのお話ですが、ある大手企業グループでミドル・シニア層の研修を行ったとき、先方の担当者から「社内的に非常に大事な取り組みなので、くれぐれも失敗しないでほしい」とプレッシャーをかけられたそうです。
「いったいどうなると失敗なのか」というと、やはり受講者アンケートの結果から、総合評価の平均が5段階の4.5点以上でなければ失敗と見られるのだそうです。

研修実施にあたっては、話す態度や話題の振り方などに気を配ることはもちろん、内容は難しすぎずやさし過ぎず、量は多すぎずに何か一つか二つ持ち帰れるものがあり、受講者たちも話し合う場面があって自己達成感を持たせるなど、いろいろ組み立てなければ評価されないそうです。

対応をする企業の研修担当者からすれば、会社への結果報告は必須でしょうが、数多くいる受講者の評価をアンケートから導き出そうというのは、方法も材料もそれくらいしかないと考えれば、ある意味仕方がないことでしょう。
ただ、本来の意味での「良い研修」というのは、「成果が上がる手助けになる研修」です。「成果が上がる研修」と、「アンケート結果が良い研修」は同じではありません。

この話をしてくれたコンサルタントの方も言っていましたが、研修なりOJTなり、何度かのプロセスを経て、その後の経過を継続的に見ながら、その都度評価して変化を追っていくことが本来の望ましい姿でしょう。
しかし、そこまで長い目で、個人まで見ながら人材育成に取り組む企業は、残念ながらそこまで多くはありません。

私が以前研修で関わったある企業では、「研修成果なんて細かく取っても意味がない」「みんなの空気感が変わったことが、肌感覚でわかればそれで十分成功」と言われたことがあります。ここまでおおらかな会社もまた少ないですが、アンケート結果に偏り過ぎた評価よりは、こちらの方がよほど現実的というようにも感じます。

研修の効果測定方法で最も代表的な「カークパトリックモデル」では、第一段階は「研修後アンケートで受講者の反応をみること」なので、まずは理にかなったやり方といえるのでしょう。
ただ、このモデルでも、その後を追跡する各段階が設けられています。「スキル評価」「行動観察」「業績への結びつき」などがあります。

このように、研修の成果を測ることは本当に難しいですが、少なくともアンケート結果だけではないと思います。


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