2016年11月21日月曜日

あらためて思う「就職活動の不透明さ」による不安感



電車で隣に座った男性二人組は、これから就職活動が始まるようです。大学3年生ということでしょう。
あまり周りに遠慮する様子がなく聞こえてくる声からは、「あまり気が進まない」とか「早く決めたい」とか、不安そうな気持ちを話し合っています。今年の状況を知っているので、「まぁ夏までには決まるよ」「そうしたいよね」などとも言っています。

うち1人は、某有名大企業にどうしても行きたいのだそうです。「どうしても入りたい」と、そのための方法をいろいろ話し合っています。もう一人の知り合いの先輩に、社員の人がいるらしく、その人を紹介するように段取りをすると言っています。
真面目に話し合っている様子や、友人のために協力しようという姿勢や、行きたい会社への思い入れなどの話を聞いていると、そこまで思われるような会社をうらやましく思い、こうやって真面目に取り組もうとしている人には、何とか成功してほしいと思って聞いていました。

ただ、私の仕事柄では、企業の採用現場が中心ながら、就活をする側にアドバイスすることも、時にはあります。そういう目線からすると、どうしても期間に限りがある新卒の就活では、あまり一つの会社に思い入れ過ぎない方が良く、ある程度のリスクヘッジをしながら、いくつかの会社で並行して活動する方が望ましいです。
思い入れが強すぎてしまうと、入社できなかった時のショックが大きいことや、一つの会社にこだわり過ぎてしまうことで、次善の策が手遅れになってしまうような懸念があるということです。

ついついそういう目線で見てしまうのは、採用する企業側と就職する学生側の様子を、これまで何年にも渡って、その両方の立場の間に入って見てきたからですが、よく考えれば、そういう見方では前向きな姿勢、自分なりの夢やチャレンジ精神は全然足りていないということですから、将来に向けた取り組みとしては、思い入れのある方がよほど好ましいように思えます。

しかし、電車で隣り合った彼らのような人たちが、本当の意味で前向きな就職活動をしようとすると、そこにはいろいろな問題が見えてきます。

これは、学生からの一方向の目線で考えなければなりませんが、そうなると、その入社を希望する会社に向けて、何をどのように努力すればよいのかが、あまりにも不透明で見えないということがあります。

成績が良いだけではダメ、英語ができるだけでもダメ、部活で良い成績を収めていても、海外留学でみっちり勉強してきていても、それが決め手になるかどうかはわかりません。
学力テストなどがあれば、そこでは一定以上の点数を取らなければならないですから、多少勉強のしようはあるでしょうが、そこでいったいどんな問題が出て、何点以上取ればよいのかは、入試の時のようにはわかりません。適性検査をやったとしても、それがどのくらいの重要度で、どんな捉え方をされるのかはわかりません。

よほど明確に採用基準を公表しているならともかく、ほとんど企業では、何に向かってどんな努力をすれば報われる可能性が高まるのかは、とにかくわかりません。
そして、運よく採用されたとしても、なぜそういう結果になったのかを説明されることはあまり多くはないでしょうし、これが不採用となれば、その理由を説明してくれるような企業は、本当に数えるほどしかないだろうと思います。

そう考えると、ゴールがあまりにも不透明過ぎるために、夢を追うようなことはほとんど不可能で、初めから妥協と打算の中で活動をしなければなりません。こんなことも、「七五三現象(入社3年以内に中卒者の7割、高卒者の5割、大卒者の3割が退職してしまう)」などといわれる、新卒者の早期離職問題の一因でもあるのかもしれません。

良い就職活動のためには、このあまりにも不透明な状況は、改善していかなければなりません。そのために必要なことのほとんどは、企業側の意識によります。自分の力と照らして、内定というゴールまでの距離が測れるように、選考基準をある程度公開して示していくことは、これからはもっと必要になっていくのではないかと思います。それが入社当初のミスマッチを減らし、早期退職を防ぐことにもつながるでしょう。

今の就職活動の不透明さは、もっともっと解消していかなければ、応募者はチャレンジや努力のしようがないということを、あらためて思っているところです。


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