2016年11月18日金曜日

「意見」「要望」「提案」を聞くからには何か答えなければならない



社員からの意見や提案、要望などの情報を吸い上げて、経営に生かしていこうというための制度は、いろいろ考えられて実施もされています。

提案制度、自己申告制度、定期面談制度といったものは、そういう意図を持って行われるものですし、プロジェクトやワーキングチームのような形で、同じような効果を狙ったボトムアップの取り組みが行われることもあります。私も社外専門家という立場で、こういう制度検討や運用に協力させて頂くことがあります。

それぞれ、その結果をうまく活かすことができれば、すべてそれなりに意味がある取り組みとなりますが、せっかく制度を入れたり取り組みを行ったりしているのに、あまり効果的な形になっていないケースは、実は数多くの企業で見かけることです。

そうなってしまう理由はただ一つだけで、「聞くだけ聞いても実行しないから」です。
例えば、自己申告制度などを行っているとすれば、本人のやりたい仕事や行きたい部署、その他仕事上の希望を聞いていると思いますが、それを聞くだけ聞いて、一向に実行しないということです。
もちろん、希望を言ったからといって、その通りになることばかりではありませんが、それが難しいのであれば、その事情なり理由なりを伝えればよいにもかかわらず、それすらもしていません。

何度言っても何も変わらないとすれば、これは「カマスの実験」と同じことが起こります。
「カマスの実験」とは、空腹状態のカマスと餌の小魚の間に、透明なガラス板を入れて仕切ると、カマスたちは小魚を食べようしますが、間仕切りのガラス板のせいで食べることはできません。
何度もガラス板への激突を繰り返しますが、やがてカマスは餌が食べられないことを悟って、行動することを止めてしまい、その後ガラス板をはずしても、餌に近寄ろうとしなくなります。「学習性無力感」と言われるものです。

これは比較的有名な話ですが、日本一幸せな会社といわれる「未来工業」の提案制度は、社内環境や仕事方法などについて、改善提案を提出した社員には、その内容を一切問わずに500円が支給され、さらに優れた提案には、万単位での報奨金が与えられるそうです。
一般的な提案制度は、「採用されれば」何かしらの報奨はあっても、そうでなければ“無視される”ということが多く、だいたい無視される件数の方が圧倒的に多いですから、制度はどんどんすたれていくことが多いです。

ある会社の社長は、11月は全社員と面談をして要望を聞くことが定例となっていて、ダメ出しばかりされるので、とても気持ちが落ち込む時期なのだそうです。中には「給料が安い」などという定番の要求もあるそうですが、そんなわがままに近い要求に対しても、何とか原資をねん出して少しでも給与アップを図るなど、何かしらの結果を見せようと努力しているそうです。

提案制度、自己申告制度、定期面談制度といった、社員の「意見」「要望」「提案」を聞こうという制度は、比較的安易に導入されることが多いように感じています。
しかし、そういう制度を有効に使うには、実際には言われたことに対応できるだけの状況を作ることと、話を受け入れようとする覚悟が必要です。

社員からの「意見」「要望」「提案」などを聞くからには、必ず何か答えを返す必要があります。事情によって「それはできない」という答えはありますが、それが何度も続くようでは、結局は聞いていないのと同じことです。

「意見」「要望」「提案」を聞くことには、それなりの責任が伴うことを理解しておかなければなりません。

1 件のコメント:

  1. 小笠原さん、全くその通りです。 すべては『相手の目線が大切』です。  自分の目線=思い付きで意見や要望、提案を募集しても結果を『相手の目線で活かす』ことを忘れては『正に逆効果』ですね。 
     

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