2016年9月14日水曜日

人材採用のヒントになりそうな広島カープのドラフト戦略



プロ野球セリーグの広島カープが25年ぶりに優勝し、地元の広島や応援していたファンたちは、ずいぶん喜んで盛り上がっている様子です。
前回の優勝時に生まれた人が、もう25歳ということですから、ずいぶん長い期間優勝していなかったのだと、あらためて思います。

久しぶりの優勝ということで、カープに関係する記事はかなりたくさん目にしますが、その中で、チームのドラフト戦略と選手育成に関して書いた記事を、興味深く見ていました。

その記事によると、広島のスカウティングには特色があって、「広島向きの選手」というものがあるそうです。体に芯がある選手が基本、内野手なら小柄であろうが肩と足、外野手なら肩と足と強打なのだそうです。

1993年から2006年まで実施された逆指名制度では、資金力で劣るためになかなか逆指名をとりつけられず、計7年分はその枠を使えず放棄する事態に陥るなど苦戦していましたが、この制度が撤廃されてからのスカウティングで、現在の主力選手が入団しています。

スカウト陣は経験豊富なベテラン揃いで、球団トップも含めてコロコロと変わらないので、方針も一定していて、さらにスカウト全員が広島育ちでチームに長く携わっているので、チーム愛がとても強いそうです。
良いという噂の選手は、中学、高校1年くらいから、ずっと追跡していくのも特徴で、そのおかげで広島向きの選手を取り逃さないということです。

スカウトは監督、コーチとの相性まで考えて獲得し、現場でも“1年間は触らない”という不文律があるそうで、取った後の育成方針もぶれていないのも、選手が育ってくる理由だろうということでした。
「独自の目線で好素材を獲得し、2軍のコーチングスタッフが徹底した反復練習で鍛えて育成する」という方式を、時間をかけて熟成してきていることは、チーム作りのモデルケースを示していると評価されていました。

これを見ていて思ったのは、企業の人材採用でも参考になるようなキーワードがたくさんあるということです。
例えば
・採用方針がぶれない。
・資金力で競争しない(できない)
・経験豊富なスカウト陣と継続的な体制
・スタッフたちのチームへの帰属意識の高さ
・チーム、監督、コーチとの相性見極め
・早期から候補選手と接点を持ち、それを継続する。
・育成重視の中長期視点
などです。

これらの取り組みを否定する人はあまりいないと思いますし、すでに同じような意識で取り組んでいるという企業もあるでしょう。
そうは言っても、プロ野球のスカウトと企業の人材採用では、プロセスに違いがありますし、こういう話はしょせんきれいごとで、実際にやろうとすると、そう簡単にうまく行くものではないという意見もあるでしょう。それは確かにその通りだと思います。

ただ、私が特に注目したのは、「人材の目利き」の部分と、それを「組織として確立している」ということです。自分たちの人材要件に合っているか、入ってから育てていけるのかといった見極めを重視していて、それを組織として脈々と受け継いでいるということです。

企業の人材採用では、ともすれば結果の評価は採用人数ばかりにフォーカスされ、入社時の「人材の目利き」の評価を、中長期の育成状況まで追跡して見ていることはあまりありません。見極めが個人の感性に任されていて、担当者ごとのばらつきが大きかったり、目線が共有されていなかったりします。人材要件自体も抽象的であったり、その時その時の状況で揺れ動いたりもします。

「広島向きの選手」と同じように、「自社向きの人材」がはっきりと言えて、その目利きを確立させることは、企業でもさらに取り組みが必要ではないかと思います。
「人材の目利き」は、もっと重視されても良いと思います。

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