2016年8月26日金曜日

「批判していること」を自分も無意識でしてしまっていること



組織風土調査と、課題改善の人事施策企画というテーマで、ある会社にうかがったときのことです。上下間にある溝が大きく、コミュニケーションギャップやモチベーション低下などにつながっているのではないかという問題意識です。

実際に調べていくと、その溝は思いのほか深く、特に若手から中堅クラスの社員は、会社への不信、不満を強いニュアンスで持っています。「こんなことがあった」「あんなことはおかしい」といった内容の、上司や会社全体の動きに関する批判ですが、その根底で共通していたのは「強制されることがあまりにも多い」ということでした。

この会社は、社長がかなりワンマンなスタイルの人で、周りの意見をあまり聞かず、一方的な調子で指示を出すことが多いようです。それに嫌気がさして辞めていく人も多いようですが、社長は「嫌な奴は辞めればよい」などと意に介するところはありません。

他の経営幹部や管理職の人たちは、社長のそんな姿勢を大いに批判しますが、この階層と一般社員との間にもかなりの溝があります。社長のことは批判しているにもかかわらず、この人たちの部下との接し方も、社長のスタイルと近いのです。
昔の部活動で、上級生のいじめで嫌な思いをした下級生が、自分が上になったら同じように下級生をいじめている例と似ています。自分がそれしか経験していなければ、無意識のうちにそれに染まってしまっているのは、よくあることだと思います。

さらに、不信と不満がいっぱいの若手社員や中堅社員に、「この状況をどうやって解決していくか」という考えを尋ねたところ、かなり多くの人が私に対して、「社外の専門家として社長や管理者を説得してもらいたい」といいます。要は「社外からの権威を使って抑えてほしい」ということです。

実際に社内の様子を観察していて、要所要所で見られるのは「有無を言わさず従わせる雰囲気」「上意下達の強い風土」です。
上司の指示命令の仕方は少々乱暴に見えますし、部下たちは部下たちで、何か問題が起こるとすぐに「上司からその人を指導してもらう」「上司を通して依頼する」などといい、自分たちの課題や要望は、上司の権威を使って抑えつけてもらおうという姿勢が見えます。

「強制される」ということを批判している一般社員たちも、他人を「強制すること」で、問題を解決しようとしているのです。やはり、自分がそういう環境しか経験していないので、無意識のうちにそれに染まっているということでしょう。

例えば、自分の親を批判していても、自分の子供には同じことをしていたりします。最も身近な親のモデルは自分の親であり、日々の生活がOJTとなって刷り込まれているので、よほど気にして反面教師にしていること以外は、無意識に同じ行動になりがちです。
これは会社の上司でも同じで、上司の行動を批判してきた人が管理職になると、それまで批判してきた上司と同じような行動を取っていることがあります。やはり上司のモデルとして自分の引き出しに残るのは、批判してきた上司のことが中心になるので、特に無意識の行動では同じようなことになりがちです。

これを解決するには、無意識の部分を「意識すること」に尽きると思います。自分の行動を振り返り、同じことをしないように自覚するしかありません。
無意識が蔓延すると、いつの間にかそれが全体の風土になり、なかなか変えられなくなっていきます。
「人の振り見て我が振り直せ」といいますが、実際にはなかなか難しいことのようです。


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