2016年7月18日月曜日

結果だけを見ていては間違うこともあるという話



もう10年近く前の話ですが、その当時お手伝いをしていた会社を訪問した時に、ある課長を紹介されました。

社長曰く、これまで何年も継続してコンスタントな部門成果を出している人だそうで、翌月から部長に昇進することが決まっているのだそうです。とても温和な方で、謙遜もあってか「部下たちが優秀で、みんな良くやってくれるおかげです」などとおっしゃいます。お話を聞いている限りでは、確かに部下との関係性は良さそうです。

私からは「頑張ってください」とお伝えしましたが、その数か月後にこの会社の社長からご相談を頂きます。お会いした新任部長が、どうも行き詰まっている様子なので、話を聞いてアドバイスをして欲しいとのことです。

ご本人にお会いすると、確かに少ししょんぼりしていて、新たな担当部門であまりうまくいっていないとのことで、自信を無くしているようです。
まずは今の状況やご自身の行動、周りの様子などを聞いていったわけですが、そこで気づいたことがいくつかありました。

一番大きかったのは、ご本人の課長時代の成功パターンが、新たな部門ではまったく通用していないということでした。
ご自身は過去の経験から、できるだけ部下の要望を聞いて仕事をしやすい環境作りに努めていたようですが、新しい部門の部下たちからは、適切な指示がないとか、方針を示そうとしないとか、リーダーシップに関することを批判されているようです。
ご自身は部下と親身に向き合っているつもりなのに、それを批判されるという経験したことがない状態に陥って、何をどうしたら良いのかわからずに混乱してしまっています。

さらに、以前に担当していた部門が現状どうなっているのかを尋ねてみると、後任にはわりと経験が浅い新任課長が来たものの、相変わらずそれまで通りの順調な仕事ぶりなのだそうです。
この部門には、営業センスと技術スキルに長けた二人のリーダーがいて、現場の仕事上のことは、この二人でほとんどを仕切っているそうです。
そんな優秀な部下がいる部門なので、そこでの課長の仕事は、彼らの要望を聞き、それを会社に通して環境作りをし、相談があればアドバイスをするということが大半だったようです。
初めてお会いした時に謙遜だと思っていた「部下たちが優秀なおかげ」という言葉が、事実という部分もあったということです。過去の成果は、現場の力によるところもかなり大きかったということでしょう。

この会社の件で、私は一概に関係者を責めることはできないと思っています。
会社は社員のそれまでの成果を認めて期待をもって昇進をさせ、昇進した新任部長はその期待に応えようと自分の経験をもとに一生懸命仕事に取り組み、部下たちは自分の仕事をしっかりと進めるために必要な要求を出しています。
みんなが自分の役割を全うしようとしていますが、唯一問題だったのは、新任部長がもたらした過去の成果は、どんな理由、どんなプロセスで出てきた結果だったのかという検証が、ほとんどされていなかったということです。

関係者は全員、真面目に善意を持って仕事に取り組んでいるにもかかわらず、少しバランスを変えたことによる見込み違いがあっただけで、多くの人があまり好ましくない状況に陥ってしまっています。

このように、結果だけを見ていたために判断を間違うということは、企業の中では大きなこと小さなことを含めて、意外に頻繁に起こります。

例えば管理職の話であれば、一から事業を起こすのが得意な人は、ある規模まで行くと伸ばせなくなるとか、小さな営業所をエースとして仕切っていた人を、大きな営業所に移したらまったく影が薄くなってしまったとか、業績悪化をいつも止める人が、その後反転させることができないとか、個人の適性に関わって起こることはいろいろあります。
その原因が仕事の進め方なのか、環境によるものなのか、人との関係なのか、なぜそうなっていくのかはやはり仕事のプロセスをよく見なければ判断はできません。

こういうことは、もうわかりきったことだと思いますが、結果を出している人材を抜擢したら期待外れだったというような話は、依然としてどんな会社からも聞きます。
そこには事前の見極めで回避できることも相当にあるはずで、そのためには、いかに結果だけにとらわれずにプロセスも見ていくかということに尽きると思います。
どんなに見ているつもりでも、結果だけを見ていて間違うことは大いにあると思います。

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