2016年2月8日月曜日

「コミュニケーションの量」と「物理的な環境」は関係するということ



先日ある会社で、現状の課題として「社内コミュニケーションの不足」という話が出てきました。どんな会社でも、何かしらの課題があることが多い部分です。

とりあえず、今後の施策を考える一環として、社内風景を見せて頂くことにしました。
そこで見たこの会社の作業環境は、日本の会社としては珍しく、一人一人の席がブースの形で囲われていました。立ち上がればすぐに周りが見渡せますが、一度自分の席に座ると他の人は一切視界に入らなくなるようなものです。

特に会話を禁止するようなルールはありませんが、社内は非常に静かで、パソコンのキーボードを打つ音だげが聞こえてきます。そんな環境が社員間のコミュニケーションの量に影響を与えているのは間違いがないように感じます。

ただ、「社内コミュニケーションの不足」が解消するために、この環境を変えれば良いかというと、話はそれほど単純ではありません。
こちらの会社で個人ブースの作業環境を作ったのにはそれなりの理由があり、それは基本的な作業がそれぞれ個人の担当者ベースで進められるものが多かったということからです。

以前は一般的な会社のように、オープンな空間でそれぞれのデスクを並べていましたが、社員同士の私語が多いとか、作業中のディスプレイが覗かれてしまうというセキュリティ上の問題などがあり、その対策のために現在の形を取り入れたそうです。当初は作業効率が上がったという評価もあったようですが、今はそれが行き過ぎた効果を生んでいるような面があるようです。

この「社内コミュニケーションの不足」というような、コミュニケーションの量に関する問題には、人の好き嫌いや話しやすさといった人間関係的な部分とともに、物理的な環境が影響を占める割合が、意外に多いと感じています。

例えば、コミュニケーションが必要な相手との物理的な距離が遠ければ遠いほど、その密度や頻度は薄くなりがちです。学生時代にクラス替えがあると、それまでいつも話していた親友と急に疎遠になってしまうような経験をお持ちの方もいると思いますが、それと似たようなところがあります。
組織変更や部署異動でお互いの勤務先が変わるような場合はもちろん、居場所のフロアが変わったとか、席が離れたとか、それくらい小さな変わり方でもコミュニケーションの量は変わってしまいます。

また、たまたま共用電話の近くの席になり、電話応対をする機会が増えたために、社内の人と会話する機会が増え、いつの間にか社内コミュニケーションの中心にいるようになったり、社員旅行で同部屋になったことをきっかけに面識ができて、その後仕事上の情報交換をするようになったりするなど、物理的な環境変化やお互いの距離間の変化が、コミュニケーションの量を増やすこともあります。

その後この会社では、まず第一歩として、同じ部署に属して仕事上の関係がある10名程度のグループ毎に、お互いがやっている仕事内容や現状を共有することを目的に、1日おきに30分程度のミーティングを義務付けるということを始めました。
ご存知の方もいると思いますが、接触の回数や頻度が多いほど親密度が増すという「ザイオンス効果」(別名で「単純接触の原理」)というものがあり、まずはそこから始めようということです。これもコミュニケーションの場づくりと考えれば、物理的な環境の一種ではないかと思います。

いずれにしても、「コミュニケーション不足」という課題には、大きなことから些細なことまで、いろいろな要素が複雑に絡み合っていることがほとんどです。そこでは「物理的な環境」ということにも目を向けておく必要があると思います。


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