2015年12月9日水曜日

あるプロトレーナーに指導されるアスリートが言った「厳しくはないけどキツイ」に思うこと  



サッカー男子日本代表の長友佑都選手や、“なでしこジャパン”の大儀見優季選手をはじめとしたトップアスリートのトレーニングを指導するプロトレーナーの木場克己さんに関する記事を見ました。

ご自身は、小学2年から柔道を始め、スパルタ式の練習で、中学では県大会2位、高校ではレスリングでインターハイ3位という有望な成績を上げていましたが、厳しい練習のせいで腰椎圧迫骨折になり、選手生命を断たれてしまったそうです。

もともと体育会系の“ど根性”にはなじめないでいて、これを全否定した独自の体幹トレーニングである「コバトレ」が支持を集めています。

これに参加しているアスリートたちの様子は、一見すればあまりにリラックスした雰囲気で、木場さんは明るく冗談を言っていることが多いようですが、オンとオフの切り替えがはっきりしていて、トレーニングの見た目はシンプルながら、かなりハードな内容のようです。

木場さんは、オンの時は大きな声で指示を飛ばし、トレーニングに一区切りがつけば、選手とハイタッチしてスイッチオフになり、選手たちに明るく声をかけるなど、「脱スポ根」の明るい演出が特徴なのだそうです。

この記事の中で印象に残ったのは、ある若手アスリートが言っていた「厳しくはないけど、キツイです」という言葉です。でも、「成果が出ている選手がたくさんいるので、しっかり続けています」ということでした。

私が企業での人材育成を見ている中で、いつも思うこととして、「厳しさの勘違い」ということがあります。ただ体力的、精神的な負荷をかけることが厳しさだと思っていて、一見すれば結果にこだわっているように見えるものの、必ずしもそうではないというような場合です。悪い意味での“気合い”“根性”というようなことです。

でも、実際の厳しさというのはそうではなく、求められる結果のハードルが高いとか、目標が高いとか、そういうことであるはずです。
そうした時に、この「厳しくはないけどキツイ」ということ、そして「成果が出ているから続けられる」ということが、実は人の成長には一番必要なことではないかと思います。


企業の人材育成の現場では、いまだに「意識が低い」「打たれ弱い」など、指導している人材に対するあいまいな批判が出てきます。そこで求めていることは、ただ雰囲気の厳しさに耐えることが目的となっているように見えます。意識が高まって、打たれ強くなったとして、それ自体は悪いことではないですが、必ず結果につながるというものではありません。

木庭さんのトレーニングは、雰囲気は和気あいあいとしていて、お互いの会話は明るく楽しいものだったとしても、そこで行われていることは、体力的、精神的にキツイとみられるトレーニングです。さらに何らかの結果につながることが求められ、それがなければ続けられないことです。

人材育成の根本的な考え方として、「厳しくはないけどキツイ」と言われるような指導が、最も重要なことではないかと感じました。


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