2015年12月23日水曜日

損害が見えにくい人事制度の不都合



私のところでよくご依頼を頂くテーマとして、「人事制度の見直し」があります。見直すということは、何かしらの不都合や、思い通りになっていない状況があるからです。

「うまくいっていない」ということは、表現を変えれば「失敗している」とも言えるはずですが、現状の人事制度に対してそういう評価をしている会社には、ほとんど出会ったことがありません。
考えてみればそれも当然のことで、「うまくいっていない」という部分を定量的に捉えることが難しいからです。

人事制度をはじめとした人事施策というのは、そもそも成功か失敗かなどということで、白黒がはっきりつくものではありませんし、さらに人事制度の不都合によって、いったいどれだけの損害があったのかは、はっきり見えないことがほとんどです。

ですから、人事制度に関しては、社員からの意見や評判などを中心とした定性的な評価と、人事部門の感覚的な問題意識だけをもって、うまくいっているとかいっていないとかということを言い、その感覚的な情報から課題を抽出し、人事制度の見直しということを言っています。

そもそもがはっきりと数値化できるものではないので、これはこれでやむを得ない部分はありますが、それでも最近の傾向として、定性的にあいまいなままで捉えていたものを、できるだけ定量化して捉えて行こうという動きがあります。

例えば、人事制度導入後の業績推移を、時期毎や部門毎に突き合わせて見て行ったり、制度運用にかかった稼働状況(運用コスト)を、制度導入の前後で比較してみたりするなど、データとして扱える情報を集めて、そのデータと人事制度との間に相関関係があるのかないのか、制度運用の仕方によって業績などに違いがあるのかということを見ていくことで、人事制度の「うまくいっていない」という部分を、より具体的に捉えようとしています。

人事制度、その他人事関連の施策というのは、その成否が感覚値で語られることが多いものです。裏を返せば、そのことによる損害があったとしても、はっきりとは見えにくいということです。損害とまでは行かなくても、不足している部分や現状に合わなくなってきた部分についても同じようなことが言えます。

「人事制度が失敗した」とは、関係者をはじめとして、誰もなかなかそうは言いません。だからこそ、何がどのくらいうまくいき、何がどのくらいダメだったのかを、できるだけ具体的に把握しようという努力が必要だと思います。
制度見直しのスタートは、まずはそこから取り組んでみてはいかがでしょうか。


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