2015年12月14日月曜日

明確な線引きが、本来の目的から遠ざけることもある



消費税の軽減税率の導入が合意されたということですが、外食と酒類を除く生鮮・加工食品全般が対象とされているものの、ではフードコートでの飲食はどうなる、コンビニのイートインコーナーで食べたらどうなるなど、なかなか線引きが難しいようです。

他の世界各国で導入されていることではあるものの、どの国でも同じような線引きに関する問題を抱えていて、そこに利権が産まれてしまっていることもあるようです。そんな話を聞いていると、そもそもこの方法を今から新たに導入すること自体、良いのかどうかという線引きが難しいと感じます。

それはさておき、このような良し悪しの線引きが難しいことは、他にもいろいろあると思います。
例えば車のスピード違反。明確な制限速度は決まっていますが、現実的に違反として切符を切られるのは、それほどキッチリしている訳ではなく、グレーゾーンのような運用があると思います。

ビジネスマナーのようなことであれば、一般的とされる原理原則はありますが、実際にはその場の状況や雰囲気、相手との関係性などによって、対応方法に微妙な差が出てきます。人によって良しとする形が違ったりもします。

なぜそういうことが起こるかというと、車の速度制限は安全とスムーズさを両立した交通を維持するため、ビジネスマナーは相手との良好な関係作りのために、あえて明確な線引きをしない方が都合が良いからです。

実は同じようなことが、私が関わることの多い「企業の人事制度」の中でもあります。最近は少なくなりましたが、よくある評価制度のような○段階評価ではなく、イエスかノーか、できたかできなかったかで白黒がはっきりつくような、チェックシートのような形を望まれることがあります。

確かにあいまいな評価が良くない作用をすることはありますが、仕事として取り組んでいることを、すべて二択で切り分けることは、そう簡単にはできません。それをするには、多少の理不尽があっても、無理やりにでもどちらかに決めるということをするしかありません。

ただ、人事制度の目的でいわれることは、「人的資源を活性化して会社の業績向上につなげる」ということです。
人事の施策というのは、それが具体的にどんな効果があったのか、なかったのかということは、いろいろな角度から継続的に見ていかなければわかりづらいということがあります。その人の能力や適性、業務内容、メンバー構成、その他多くの要素が複雑にからみ合うものを単純な二択に落とし込むには、これを無理やり行うしかなく、それは結局そもそもの目的にはつながりません。

最近の人事施策に関する考え方として、様々な情報をできるだけ数値化したり、定量的に捉えようとする試みがされていて、徐々に成果も出るようになっています。それでも最終的に「これが良い」「これは悪い」と明確に切り分けるまでには至らないでしょうし、私はそもそもそこまで明確な線引きをする必要はないのではないかと思っています。それがかえって本来の目的から遠ざけることになると思うからです。

話題の軽減税率では、あいまいな線引きは許されませんから、これから明確な切り分けが行われていくのでしょう。いい形に収まれば良いと思いますが、線引きが難しいものを無理矢理にしようとすればするほど、そもそもの目的から離れていってしまいそうなのは、何か同じことのような気がします。

本来の目的のために、あえて明確な線引きをしない方が良いこともあります。


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