2015年11月9日月曜日

組織改革で「人材登用を優先する会社」と、「人材整理を優先する会社」



ある中堅企業の社長との、ちょっとした立ち話でのことです。
事業譲渡でオーナー経営者が変わり、その方はグループ会社の社長という立場で経営にあたっています。事業譲渡が行われる前は、その会社の役員でした。

オーナーが代わってから、会社の雰囲気はずいぶん変わったのだそうです。
新しいオーナーからは、会社の運営に関して、ああしたいこうしたいといろいろ言われるのだそうですが、自分の意見と違うことがあまりにも多いので、意見を言ったり反対したりはするものの、結局は押し切られていってしまうそうです。
そんな動きが社員に直接影響することも出てきているためか、一部の社員が流出し始める事態となっているとのことです。

「経営として何が正解なのかはわからないけど、自分の考えとは全く違うので、それに合わせるのはさすがに難しい」とおっしゃっていました。

私も会社の合併を何度か経験しているので、オーナーやトップの考え方次第で、社風が大きく変わっていくことは実際に体験しています。組織改革は常に意識して継続しなければならないことではありますが、M&Aのような局面では、それまでうまくいっていたことや、自分たちが強みと思っていたこと、良い意味での特徴と考えていたことまで変更を迫られることがあり、そういう部分で納得できないことも多々ありました。
会社の経営にとって「何が正解か」ということは、主観による部分もかなり大きいのだと思います。

組織改革を考えるにあたっては、人材の入れ替えという話が必ず出てきます。
人が変わると、組織の雰囲気や風土はスピーディーに変わりますから、組織改革の上で用いられることが多い施策ですが、その進め方として大きく二つの考え方があります。
まず新たな人材の登用から始める場合と、今いる人材を整理することから始める場合の二つです。

これは私が見てきた経験上のことなので、あくまで主観でしかありませんが、長い目で見て結局うまくいっているのは、前者の「まず新しい人材を登用する」という会社だと思っています。先に人員整理を優先した会社で、その後思い通りの形で組織改革を成し遂げた会社を、少なくとも私は見たことがありません。

実は今回話題にした社長の会社でも、一部で人員整理が優先される傾向があるようです。組織の機能化とか余剰人員の適正配置とか、きれいな言葉で語られますが、実際にやっているのは転籍や降格や退職勧奨など、人員整理の施策です。

こういう中で何が起こるかというと、一つは人がいなくなった現場が急激に回らなくなってしまうこと、もう一つは人員整理の対象になった以外の人も辞めて行ってしまうということです。
まず、現場が回らなくなくなるというのは、単純に仕事上の穴が開くからです。効率の悪い面が確実にあるとしても、その業務プロセスの見直しをせずに人員だけを減らせば、全体の仕事に滞りが出るのは当然でしょう。

また、人員整理というのは、社内に無言のメッセージを発します。能力が高い中核人材も、「いつか自分も同じ扱いをされるかもしれない」「そういう扱いをする会社は信頼できない」などといって、組織を後にします。

これを逆に、新たな人材の登用、配置を優先して行うと、まずは現場のリーダーシップや仕事の進め方が変わります。そこでおかしな嫌がらせなどがあっては論外ですが、普通は新たに目指す組織の方向性に沿った変更が行われます。
そこで居心地が悪いのは、新たな方向性に合わない人たちであり、会社にとって望ましい人材は居心地がよくなるので、そういう人たちが力を持つことで、組織改革は良い形で進みます。

組織改革を心地よいと思う人材が、その中心を担う人材です。それを見極める前の人員整理は、波及するマイナス効果から考えても、確実に逆効果です。
人に関わることは、焦っても決して良い結果にはつながらないと思います。


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