2015年11月11日水曜日

降格を強く希望する課長の話



最近は、昇給や昇進といった上昇志向をあおる手法では、モチベーションアップにつながらないという例が増えています。特に若い世代では、管理職にはなりたくないという者も増えていて、実際に昇進を断る者もいます。

その理由を聞くと、「金銭的メリットがない(残業代がなくなる)」「業務負担が増す(責任ばかり押し付けられる)」「現場の仕事の方が面白い」などというものが出て来ます。
私としては、そう思われても仕方がないと思う部分と、そんなことはないと反論したくなる部分の両面がありますが、少なくとも管理職の仕事を魅力的に思えない人がたくさんいるということだけは間違いありません。

そんな中、最近ある会社で、課長職からの降格を希望している人がいます。人事の現場にいると、こういう話はときどきありますが、実際にご本人といろいろ話し合いをして、その結果として役職を外すこともそうでないこともありますし、部署異動などを合わせて考えることもあります。仕事をフォローできる人材をつけたり、体制変更を考えることもあります。中には退職を迫るような会社もあるでしょう。
その結果はどうあれ、少なくともお互いにどうすることがより良い方向になるのかを話し合い、そこで何らかの妥協点を見つけていこうとすることが大半だと思います。

しかし今回、この降格希望の課長には、ちょっと次元が違うかたくなな感じを受けています。
もともとは真面目で素直な人ですが、よほど自信喪失をしたのか、やる気を全く失っており、周りのアドバイスにも聞く耳を持とうとしません。

「新人レベルの平社員にしてくれ」「給料もそれで構わない」などと言っていますが、本当にそうなったら、自分の身の上にどんな影響が出るのかを考えていると思えません。メンタルダウンの兆候にも注意していますが、そういう様子は今のところは見られません。
その振る舞いを部下たちが見れば、「あきれた上司」にみえてしまうので、さらに風当たりが強くなって本人のつらさは増しています。

会社の中で、この課長をどういう扱いにするかは、いろいろ話し合いが継続されています。「本人にやる気がないなら、外すしかない」というのが本来なのかもしれませんが、すぐに代わりの人材を充てられるような規模の会社ではありません。

人材に対してポストの方が不足している大企業のような話がある一方、ポストがあってもそれを担う人材がいないというような中小企業特有の問題があります。
そんな中小企業の場合は、能力的に多少物足りなくても、いなくなってしまっては組織が回っていかないので、そんな人材をなんとかフォローしながら役割を全うしてもらうことも多いと思います。甘い処遇だと言われてもやむを得ない事情があります。

この問題のはっきりした答えはまだ出ていませんが、周囲への影響も大きいので、役職は外すことになるのでしょう。しかし、本人の希望が叶ったからと言って、その後やる気を出して仕事に取り組むとは思えませんから、それこそ本人が辞めるとでも言わない限りは、何とか戦力化しようという取り組みを続けることになるのでしょう。どうすることが正解なのかは、はっきり言ってわかりません。

ただ、こんなことからも、従来の「上を目指すことによるモチベーション」の限界を感じているところです。


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