2015年10月14日水曜日

「報・連・相」の「相談」だけが違うこと



組織のコミュニケーションにおいて、「報・連・相」が大事とよくいわれます。このうち、「報告」「連絡」については、多くの人が半ば義務として行っているように思いますが、「相談」に関してはどうでしょうか。あまり積極的に行われないことも多いのではないでしょうか。

最近、あるコンサルタントの方の講演を聞く機会がありました。年令は50代後半、大手企業の元部長という方で、そこで培った経験と専門性を活かしてシニア起業をされたようです。起業して間もないということもあり、何事にも一生懸命で、結構力が入っている感じがします。
お話をうかがっていると、大きな仕事に携わった経験も豊富なことがよくわかり、明快な物言いをされる優秀そうな方です。

そんな中、私が気になったのは、講演の最後にいくつかあった質疑応答の場面でのことです。
事業の進め方、問題への解決策、人事施策といったことへの見解や意見を求められるような質問でしたが、どの質問に対しても非常に明快な回答をされています。「○○の場合はこうすべき」「こうあるべき」「○○のような施策が成功する」などといった感じで言い切っています。

一見すれば、明快で良さそうに感じるかもしれませんが、私はこの方に何かを相談しようとは、失礼ながら思いませんでした。講演での質問という断片的な情報しかないにもかかわらず、すべての答えが一方的で、幅やエクスキューズが一切感じられなかったからです。

たぶん、ご自分の経験に自信があり、今までそうやって成功してこられたのだろうと思いますが、何十年か在籍していて多くのことがわかっているご自身の出身企業と、コンサルティングの形でかかわるクライアント企業とは、環境がまったく異なります。

にもかかわらず、あまりにもはっきりと言い切っておられるので、たぶんこの人に何かを依頼しても、自分のやり方へのこだわりが強くて、相手の事情にはあまり配慮せず、聞く耳を持たないように感じ、「相談」しても一方的な答えを押し付けられて、良い結果にならないと思ってしまったということです。

「報告」「連絡」は、相手に知らせる、理解してもらうことであるのに対して、「相談」というのは、どちらかといえば自分のためにすることです。何か自分のプラスにするために、質問したり助言を求めたりするわけですが、それに見合うものが得られないとわかっていれば、相談などはする訳がありません。

私が感じたようなことは、上司と部下の間や先輩と後輩の間など、企業の中でもよくあることではないかと思います。
「あいつは全然相談をしてこない、報連相がなってない」などとおっしゃるマネージャーにときどき出会いますが、こと「相談」に関しては、される側の姿勢や態度に問題があることが少なくありません。

「報告」「連絡」は、する側が相手の立場に立つことが必要であり、「相談」は、それとは反対に、される側が相手の立場に立つ必要があります。

その区別さえ意識していれば、もっと数多くの「相談」がされるようになり、組織内でのコミュニケーションは、さらに良くなっていくだろうと思います。

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