2015年9月28日月曜日

みんながつらくなるだけだった「採用選考に関する指針」は、もう時代に合わない



大学生の学業優先を目的として、政府の要請を受けた経団連が企業の採用活動の後ろ倒しを定めた「採用選考に関する指針」ですが、当初から言われていた懸念がさらに増幅した形で現実化してしまっています。

選考プロセスの開始時期に枠がはめられたため、活動が短期決戦になることが必然となり、学生は企業研究がじっくり行えなくなったり、就職への不安から逆に学業が手につかなってしまったり、同じく企業側でも、応募者数の確保が困難になったり、内定辞退の増加といったことが起こっています。

大手企業の採用活動が後ろ倒しになったために、特に中小企業では9月後半になってからの内定辞退が増えていて、従来であればおおむね落ち着く時期であるはずの採用担当者には、頭を抱えている人も多いです。

また、今年は売り手市場であったこともあり、経団連の加盟企業でさえ、指針を守らずにフライングする企業が続出しました。

私が思うに、当初の目的は結局何一つ果たせず、何も良いことがなかったように思います。

こうなってしまっては、そもそも指針自体がない方が良かったのではないかと思ってしまいますが、実際にそうなったとしたらどんなことが考えられるでしょうか。

まず、自由競争となれば、競争力がある大手企業の方が、人材確保を有利に進められるということはあるでしょうし、俗に言われる「青田買い」ということも、確実に起こってくるでしょう。
大学入学後の早い段階で、すでに就職先が決まっているような者も出てくるかもしれませんし、インターンやアルバイトという形で、良い人材を早い時期から囲い込もうという動きも出てくるでしょう。

ただ、よくよく考えてみると、まず大手企業が有利とは言っても、かつてのように大量採用する時代ではありませんから、その相対的な影響度は減ってきています。
さらに言えば、「青田買い」をはじめとする早期化には、絶対に限度があります。そもそも「3年後にうちの会社で採用します」などと断言することは、先行き不透明な現在では、そう簡単に言えることではありません。

その年の採用人数をどうするかは、通常1年前くらいでなければ決められないでしょうし、それでも見通しを誤って、内定取り消しをするような企業が毎年出てきますから、先のことを約束するということは、会社にとって結構なリスクになります。
「青田買い」「早期化」と言っても、結局は直近1年程度の範囲での話ではないかと思います。

これは学生側でも同じことで、早く就職を決めたいという心理があったとしても、それは卒業の半年前を目安に、「夏休み前までには」「9月中には」といった話がほとんどだと思います。2,3月ごろから内定出しをするような企業がありますが、ほとんとの学生は、それが希望の会社でない限りは、その内定を辞退して活動を続けます。
学生にとっても早く決めてしまうリスクがあり、仮に企業側が「青田買い」を進めようとしても、それに乗ってくる人ばかりではないということです。

これは私の個人的な意見ですが、選考プロセスを縛るような指針を、経団連という任意団体が出すような構図は、すでに今の時代背景には合っておらず、もう不要ではないかということです。
今のような多様化の時代に、自由度を制限するような施策では、もう機能はしないでしょう。

それよりも、「おわハラ」に代表される不当な囲い込みなど、倫理的な問題に強制力を持って取り組むことの方が、よほど重要ではないかと思います。



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