2015年9月11日金曜日

「社内研修が受けられない」という時代に必要な、受けられない人への配慮


社内研修といえば、今は講師をやらせていただく立場なので、常にカリキュラムを工夫しながら、どうやったら良い効果が得られるかということを考えていますが、そもそも私自身は社内研修が好きではありませんでした。

自分が研修企画をする時には、今と同じくどんなものがみんなに興味を持ってもらえるか、どうやったら効果が上がるかということを考えていましたし、社外のセミナーや講演には、人事という役得もあって、積極的に参加していました。
ただ、それが社内研修で、なおかつ自分が受講する側となると、とにかく嫌で面倒で、何とか受けずに済ませたいと思っていました。理由は単純で、「面白いと思えなかったから」ということです。

社内研修は、基本的には会社が必要と考えることを、本人の興味とは関係なく行うものです。強制的に受けさせるという面がある限り、つまらないと思う人、やる気のない人がいるのは、ある意味仕方がないことだろうと思います。

ただ、最近は、社内研修に取り組む人たちの様子が、少し変わってきている気がします。真面目に一生懸命取り組み、自分なりに何かを得ようとしている人の比率が増えているように感じます。
その理由の一つとして、今までのように、社員がみんな一律に研修を受けられる環境ではなくなってきているということがあるのではないかと思います。

潤沢に予算がある訳でなく、時間的な余裕も少ない中では、社内研修は「選ばれし者」でなければ受けられなくなってきているということです。
多くの会社で最近要望として良く出てくるのは、「選抜研修がやりたい」という話です。部長研修、リーダー研修といった対象者が画一的なものでなく、役割を担う素養がある者に、集中的に教育投資をしたいということです。

こういう中では、これまでとは違って新たに考えなければならないことが出てきます。それは「研修を受けられない者」に対する配慮です。

研修効果を高めるためには、その後、現場に戻ってからの取り組みが重要で、そのためには周囲にいる人たち、とりわけ上司との関わりが大事になりますが、選抜研修を行うと、この上司の振る舞いが悪影響を及ぼすことがあります。

「自分はそんな研修受けたことがない」などと言って知らんふりをしたり、「そんなことは意味がない」などと言って、本人のやる気の火を消してしまったり、これは冗談に聞こえるかもしれませんが、部下に対してすねたりいじけたりということがあります。
こういうことは、上司だけでなく、先輩や同僚といった間柄でも同じように起こります。自分以外の誰かが、目を掛けられているのをうれしいと思える人は、それほど多くはないでしょう。

会社組織の中では、全員を平等に扱うことはできませんが、差をつけることには理由が必要です。さらに全体最適のためには、どちらの側に対しても配慮が必要です。この社内研修の例で言えば、受けられる人、受けられない人の両方です。

こういう時には、事前に上司の立場を立てて、研修の概略を説明して協力を仰いだり、みんなが受講できる研修も並行して企画してバランスを取ったり、などという配慮も必要になってきます。他にも考えられることはあるでしょう。

どちらか一方をないがしろにしてしまうと、組織の総合力には必ずマイナスに働きます。これは決して悪平等ではなく、私は組織全体のために必要なことだと思います。

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