2015年7月20日月曜日

“給与テーブル廃止”まであった「制度がダメなら変えればいい」という話


先日、グループウェアで国内トップシェアのサイボウズ株式会社、青野慶久社長の講演を聴く機会があり、そのお話から思ったことです

ユニークな社内制度を数々取り入れている会社で、副業OK、出戻りOK、育児関連、その他多様なワークスタイルを認めていますが、その中で、「給与テーブルを廃止した」という話がありました。

給与テーブルがあることによって、内向きの視点で社員同士の他者比較が始まることを好ましくないと考えたからだそうで、どうやって社員の給与を決めているかというと、「市場価格」なのだそうです。

採用活動を継続的におこなっていると、どの程度のレベルの人が、どのくらいの給料をもらっているのかという市場価格が体感的にわかるので、それに合わせて給与設定をするのだそうです。
社員同士の比較がしづらくなったというデメリットはあるものの、あくまで社員個別に、「あなたの今の仕事ぶりではいくらの市場価格になるか」という観点で話し合うのだそうです。

最近は、IT系エンジニアの人手不足により、市場価格も上がっているので、仮に社員の仕事内容に変化がなくても、市場価格に合わせて給与が上がるということもあるそうです。

私は人事制度の策定をいろいろな企業でお手伝いしますが、給与体系が決まっていないような会社から制度を作って欲しいと依頼されることはあっても、すでに制度を運用している会社がやめたという話は聞いたことがありません。

たぶん、世の中のほとんどの会社は、制度をやめるということイコール後退と捉えますし、まして給与テーブルのようなものは、人事制度でいえばわりと根幹に位置するものですから、それを無くすなどという選択肢は持っていないことがほとんどでしょう。

ただ、私はお話をうかがっていて、企業理念や風土、会社として目指す方向によって、一つの方法としては考えられるものだと思いました。

給与体系はその会社固有の制度ですから、必ずしもその人の市場価値を反映したものではありません。価値を生み出さない人でも年令とともに昇給していくような制度によって、仕事内容と市場価格のギャップが大きくなりすぎているという問題を抱えている会社がたくさんあります。

また、社員同士の他者比較というのは、どこの会社でも見かけることですが、それはお互いの切磋琢磨につながるようなことばかりではなく、どちらかといえば、「なぜあの人が・・・」「なぜ自分は・・・」という不満や苦情につながっているケースの方が多いように感じます。
これは、あまり生産的とはいえない話ですし、その原因の一つに給与テーブルがあるならば、これを廃止するという考え方は確かにあるでしょう。

青野社長がおっしゃっていたことで印象深かったのは、「制度がダメなら変えればよい」ということです。多くの人は「確かにその通り!」と思うでしょうが、それが給与テーブルを廃止するというような発想までには至らないと思います。
ただ、やはりそれは固定観念であって、給与テーブルであっても、絶対に無ければならないというものでは確かにありません。

社内制度というのは、その会社の業績を上げるために存在するもので、その会社ごとに独自で考えるべきものです。もっともっと柔軟な発想があっても良いのではないかと考えさせられた一件でした。


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