2015年5月27日水曜日

「自分の経験を教えたい」というコンサルタント希望者の独りよがり


私が独立して仕事を始めてからしばらく時間が経ちますが、同じような仕事のしかたを希望する人や、独立したばかりの人から、コンサルタントという仕事に関して、相談されたり意見を求められたりということがときどきあります。

独立したいという人には、勧めも止めもしませんし、すでに独立した人であれば、うまく行けば良いなと素直に思います。

ただし、その中には例外があります。
一つは、他人まかせが当たり前と思っている人が独立を考えている場合です。何でも業者頼みで済ませようとしていたり、知人や仲介者など、他人を頼ってどうにかしようということばかり考えているような人には、独立を考え直した方が良いと伝えます。すでに独立している人であれば、まずはどんなことでも自分で主体的に関わることを勧めます。
ただ、言われたからといって、なかなか変わるものではありません。

さらにもう一つは、「自分の経験を伝えたい、教えたい、それで相手の会社を変えたい」という自分の思いばかりを強く語る人に対してです。

この人たちに私は、「そういう思いを捨てられないなら、コンサルタントはやめた方が良い」と伝えます。仕事に強い思いを持つことは必要ですが、これはコンサルタントの個人的な基準による独りよがりであり、「教える」などと言っている時点で、クライアントとなる企業にとっては、大きなお世話であることが多いからです。
 
こういう思いを語る人は、一つの企業を定年近くまで勤め上げた人や、大手企業で専門的な経験を積んできた人、組織を率いていた管理職経験者などが多いようですが、もちろんそればかりではなく、いろいろな経歴の人がいます。
この人たちの共通点は、自分の専門分野に関するこだわりが強かったり、組織はこうあるべきという“あるべき論”の意識が強かったり、要は自分の中の基準が明確で、なおかつ確立してしまっているということです。

そもそもコンサルタントというのは、その会社を変えよう、人を変えようなどと言って、自分から乗り込んでいく存在ではありません。自分基準を持つとともに、その会社が成長していくにはどうすることが早道かと、相手目線で考えて実行することが仕事です。

スポーツのトレーナーのように、相手の体力や技術を見ながら一緒に目標を定め、トレーニングプログラムを一緒に決め、その取り組みをサポートしていきます。ここでは、全員がオリンピックを目指すようなことはないはずですが、自分の思いばかりが強い人は、誰に対しても“自分の理想形”を目指そうとします。
「相手に合わせることなんて当たり前」と思われるかもしれませんが、自分基準に引きずり込んで、結果的に会社の成長を遅らせているコンサルタントを何人も見てきました。

自分の経験を伝える、教えるためには、必ず“相手目線”が必要です。どんな言い方で、どんなタイミングで、何をすれば受け入れてくれるか、どんな施策なら実行できるか、何をどんなプロセスでやれば効果的かなど、相手の様子を知り、それを見極めて働きかけることの方が、“自分の思い”よりもよほど重要だと私は思います。

「自分の経験を教えたい」がコンサルタントになりたい理由なら、それが独りよがりになっていないかを再確認する必要があると思います。
これは、実はどんな仕事でも同じではないでしょうか。

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