2015年3月4日水曜日

街中の名刺交換が本当に研修だとしたら、どんな効果を狙っているのか


「すみません。新人研修中なんですが、よろしければ名刺交換をして頂けませんか?」
街中でこうやって声を掛けられた経験がある方がいると思います。

でもこの実態は、その後電話などがかかってきて、しつこく営業されるということらしいです。相手が本当に新人なのかはどうもよくわかりませんし、理由をつけて名刺をもらって、それを営業先にしてしまうのであれば、これは研修ではないでしょう。

私は、相手がどんなに真面目そうな人であっても、道端で知らない人に名刺を渡すことはしませんが、新人研修などといわれると、ついつい渡して「頑張れ!」の一言も言ってあげたくなる人もいると思います。そんな人の善意に付け込んで、半分欺いたような形で行う営業スタイルは、それをやらせている企業の見識を疑いますし、それに巻き込まれている社員の人たちも、気の毒な感じがします。

今回はそういうモラルの話はさておき、もしもこれが本当に研修だとしたら、いったいどんな研修効果を狙っているのだろうかと考えてみました。

「知らない人に声を掛ける訓練」

「名刺交換の練習」
これは別に街中で名刺交換をさせなくても、どちらも他にやり方はありそうです。

「寒い中、暑い中など、つらくても頑張る」

「人から冷たくあしらわれることに挫けないメンタルを作る」
これらも仕事の大変さを思い知るためなら、やはり他にやり方があるでしょう。例えば実際の営業活動の中に飛び込み営業などがあるならば、そういう実践の場を使った方が、後々でよほどためになると思います。

要は、街中の名刺交換が研修だったとしても、どんな効果を狙っているのかが良くわからず、研修として成り立っていないという事です。

世の中に研修と言われるものはたくさんあります。軍隊のように、とにかく肉体的、精神的に厳しい団体行動を課してカルチャーショックを与えるようなもの、高度な研究テーマを課して、とにかく頭が疲れるもの、論理を知るためのもの、スキルを学ぶもの、その他いろいろです。

私もその企画や講師として研修をお手伝いすることがありますが、本当の意味での効果を得るのはとても難しいことです。
多くの研修では、実施直後はなるほどと納得して、次への取り組みを思い描いていたりしても、時間の経過とともに刺激を忘れて意欲は下がり、最後は元と変わらないこととなってしまっているのではないでしょうか。
特に人の行動を変える、マインドを変えるといったことは、なかなか時間がかかることですし、どんなことがその人の心に響くかは、人によって違います。受講後のアンケートなどを見ても、同じ研修の中でためになったと思うことや印象に残ったことは、人それぞれまったく違います。

研修に関してよく言われるのは、「研修で上乗せの効果を得るのは難しいが、やめると確実にレベルダウンが起こる」ということです。レベルを維持するために、研修を継続的に実施する必要があるということですが、最近は予算削減の企業も多く、研修はどうしても後回しにされがちになっています。

よく「研修効果が見えない」ということをやらない理由にしていますが、効果が見えない一因には、何をどれだけ求めるのかを事前に明らかにしていないということがあります。

企業研修での様子を見ていると、結果を急ぎ過ぎたり過大な期待をし過ぎたり、求める結果自体が曖昧だったりということが見受けられます。研修をやること自体が目的になっていると感じることもあります。
最近は短い時間軸で具体的な数値に見える効果を期待されたりしますが、それほど簡単に人の意識や行動が変わることはありません。

研修効果を得るためには、事前に期待する効果を明らかにし、それに向けて様々なパターンを網羅した学びの場づくりをするということだと思います。
何のための研修かをはっきりさせなければ、街中の名刺交換とあまり変わらないことになってしまうのではないかと思います。


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