2015年3月13日金曜日

「希望通りの研修」で本当に効果が上がるのか?


多くの企業では4月から新人研修が始まるでしょうし、それ以外にも様々な研修が実施されると思いますが、その効果が思い通りに上がっているかというと、なかなかそうはいかないことが多いのではないかと思います。

私もいろいろな企業の研修を、受講者、企画担当、講師など、様々な立場で長らくかかわってきましたが、そんな経験から思う研修効果を上げる方法はたった一つだけ、「本人が学びたいと思うものを学ばせる」という当たり前のことです。

これは、私自身がある外部研修に、自費でなおかつ休日に受講した時、はっきりと思ったことです。
その研修では、他の受講者も私と同じく自費で自分の意志で参加している人たちばかりで、そのためか私がいろいろな形で経験してきた研修のどれよりも受講者が熱心で、やはりそういうものかと確信してしまったということです。

「学びたいものを学ばせること」が効果的なのは、あまりにも当たり前のことですし、多くの企業で研修を企画している人たちも、ほとんどが意識していることだと思います。

ですから、研修企画担当者の多くは、社内研修で「学びたいもの」「必要な知識やスキル」が何かを現場に問い合わせたり、希望を出してもらったりということをします。
また、研修カリキュラムをカフェテリア方式で本人に選ばせたりする方法も、「自分の意志で学ぶ」という形をとって研修効果を高めたいということでは同じ主旨だと思います。

しかし、ここで研修内容の希望を聞いたり本人に選ばせたりすることで、研修効果がそれまでよりも大きく向上するかといえば、それほどのことはありません。
 
あるIT企業で、現場に研修内容の希望を聞いたところ、「プログラミング言語研修」などと言ってきたことがありました。会社としては「そんなものは必要な人が自分で学ぶべきもの」と思いますが、本人たちが「それを学びたい」と言うこと自体は否定のしようがありません。ただ、希望を聞かれたのにそれが通らないとなると、かえって不満につながったりします。

また、部門長やマネージャーなどに尋ねてみると、「マネジメント」や「マインド」や「リーダーシップ」などと言われることが多いですが、これはあくまで“上司がやらせたいこと”で、受講者本人たちの希望ではありません。上司自身は意外に自分のことを棚に上げていたりしますので、それを見ている部下たちは「自分たちより上司の研修の方が先でしょう!」などと不満を持ったりします。

さらに「カフェテリア方式の研修」も、ある選択肢の中から選ばせていること自体が「学びたいもの」からはズレますし、一定の受講義務が課されることが多いですから、これも「自分の意志で」という形にはなかなかなりません。

私は、何とか「自分の意志で学ぶ」という形を取ろうとする取り組み自体を否定はしませんが、会社で行なう研修は、どんな形をとったとしても結局は強制です。

社内研修には、学校でいう必修科目のように、知識、スキル、マインドとして、「社員であれば最低限身につけていてもらわなければならない」というものが必ずあります。それは興味があろうとなかろうと、本人の意志とは関係がありません。

選択科目で希望を聞くことは良いですが、必修科目は本人に意志に関わらず、必ずやらせなければならないし、身につけてもらわなければなりません。強制であっても一定の効果を得なければなりません。

最近は、研修効果うんぬんから「本人が学びたいもの」を重視しすぎて、社内研修での必修科目と選択科目の区別があいまいになっている感じがします。
そんなメリハリをあらためて考える必要があるのではないかと思います。


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