2015年1月19日月曜日

会社と社員の関係に必要な「二者両立」を目指す考え方


ここ最近、続けていくつかの会社から、人材流出に悩んでいるという話を聞きました。
どの会社も業績面での厳しさがあり、社員に様々な面でマイナスになる協力を求めなければならない状況が共通しています。

人材流出の原因が、社員への待遇と会社の先行き不安であることは明らかですが、引き留めるための明るい展望がなかなか打ち出せないこともあり、担当者をはじめとして大変ご苦労されています。

このように業績不振に陥ってしまうと、やむを得ないことではありますが、社内的には「二者択一」の論理で物事が判断されることが多くなります。
多くの会社では、「もし会社がつぶれたら路頭に迷うのは君たちだ」「だから協力してくれなければ困る」などと言い、会社が“業績を維持、拡大するため”に、社員の“給与や賞与を削る”“人員を減らす”“単位時間当たりの仕事量を増やす”“休日休暇や福利厚生を減らす”といったようなことが行われます。

しかし、私が見ている中で感じるのは、こういう会社は業績が好調の時であっても、会社対社員の関係では、会社の事情を優先する「二者択一」の論理で、Win-Loseの関係を肯定している傾向があります。

もしも会社対会社の関係であれば、お互いがWin-Winになる必要性は常に意識され、その要素がなければ、会社同士の付き合いはそもそも成立しません。
ただ、これが会社対社員の関係となると、お互いのWin-Winが後回しにされてしまう傾向があります。会社の都合ばかりが優先される関係です。

近年は従業員満足(ES)向上の重要性が言われ、これを意識している企業は増えてきましたが、一方ではブラック企業の話題に代表されるような、会社対社員のいびつな関係が問題になっています。

これまで私がいろいろな会社を見てきた中で、業績が上がっている会社は、会社と社員の間で「二者両立」のWin-Winの関係が保たれています。業績が上がっているからそれができるのかもしれませんが、「二者両立」を意識しているから業績が上がっているという見方もできます。

ここからは私の個人的な意見ですが、少なくとも会社内で「人」を扱う立場である経営者や人事部門であれば、会社と社員の間に立って、お互いがWin-Winの関係になるように、いかに「二者両立」を目指すかという視点が必要だと思います。

もう少し言うと、経営者や人事部門のように「人」を扱う立場での者は、会社と社員の間にある利害を、いかに適切なバランスをもって調整するかということが重要な役割であるということです。お互いが納得できるWin-Winのバランスを作り出すということです。

業績不振に陥る会社は、仮に好調時であったとしても、経営者や人事部門が会社の事情ばかりを考え、社員に対して指示、説得、強制といった一方的な対応で行動する傾向を感じます。それが積み重ねられてきた結果の人材流出や業績不振という感じがします。

私は研修などで、上司不満や会社不満を訴える社員に対して、「上司や会社が、もしもお客様だったとしたらどうするのか」と尋ねることがあります。こうやって視点を変えると、お互いの関係性を冷静に捉えることができるようになる人が多いからです。
同じように経営者や人事部門でも、「自社の社員がもしもお客様だったら」という視点が必要だと思います。

従業員満足は、決して社員の甘やかしではなく、会社と社員のWin-Winの関係を作り、それを会社の業績向上につなげようという考え方です。

経営者はもちろんのこと、人事部門という立場でも同様に、その先頭に立つ姿勢が必要ではないかと思います。


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