2014年12月5日金曜日

新卒内定者への“オヤカク(親確)”と、そこに感じる社会背景の矛盾


“オヤカク”とは「親への確認」の意味で、企業が学生を採用する前に親の確認をとっておくことを指して言います。

最近の採用活動の現場では、こういう動きがよく見受けられるようになりました。
特に今年は内定辞退が増えているため、それを防止する施策のアドバイスを求められることが増えましたが、その中にはこの“オヤカク”に相当する活動があります。

例えば内定者の家族や親族を対象にした会社説明会、懇親会の開催、挨拶状や会社資料などの送付、実家の家庭訪問などを検討し、実施する企業もあります。、

どんな企業でも「良い人材を確保したい」と考えるのは当たり前ですから、これらの活動はその意識に沿ったものです。
これは会社の規模を問わず、会社と社員の間で家族ぐるみの関係が作られていると、特に社員の定着にはとても有効に働きます。「社員に長く働いてもらうこと」を良いことと捉え、それを優先して考えれば、こういう活動も含め、社員の周りにいる家族、親族、友人といった人たちとの関係作りは、今後さらに大事になってくると思います。

ただ、こんな動きがある一方、社会的にはこれと異なる動きもあります。
例えば解雇規制の緩和という話があります。これはみんなを等しく長期雇用することは、企業としてはもう無理だから、戦力にならないと判断した人は、会社から追い出しやすくしましょうということです。
力があると見られれば引き留められるでしょうし、そうでなければ辞めてもらうということで、人材はその時その時の会社の事情で選別するということです。これは非正規で働いている人が増えている現状についても、同じことが言えます。

ここで“オヤカク”の話に戻ると、新卒内定者はそもそも戦力になるかどうかは仕事をやらせてみなければわからない面があります。もちろん真面目に責任を持って採用したでしょうし、さらに責任を持って育てていこうとしていると思います。それでも、言い方は悪いですが、将来的に「定着して欲しくない人材」になる可能性があります。

こうなると、周りの家族まで取り込んで、「長期的にお付き合いしましょうね」というメッセージを送っていたにもかかわらず、その手のひらを返さなければならない時が来るかもしれないということです。
もちろん社員の能力に起因することではありますが、これを社員の立場から見れば、「好きだと言われて家族ぐるみで付き合っていた婚約者に振られた」ようなものです。
会社側は通常以上に、しかも家族ぐるみで恨まれるでしょうから、これは非常に好ましくないことです。

私が採用現場に関わっている中で考えれば、“オヤカク”のような活動は良いことですし、必要なことだと思っています。ただここには、これから先の将来のことまで約束しているという側面もあります。
“オヤカク”のような活動は、会社としての責任感が問われることもあり得るということは、理解しておく必要があるように思います。


0 件のコメント:

コメントを投稿