2014年12月12日金曜日

行動力があるのか、それとも待てないだけなのか


昨今のビジネス環境では、特にスピード感が大事になっています。多くの材料を集め切って、綿密な計画を立てて物事を進めるような昔ながらのやり方は、それが通用する場面はとても少なくなっています。

こんな環境の中ですから、有能な経営者の方々というのは、概して行動も判断も早く、私自身は感心させられることも多いですが、やはりその反面では、どこか“せっかち”という部分があります。人の性格の長所と短所は裏表の関係ですから、同じ特性が良い効果をもたらすことも悪い作用をすることもあります。

これはある中小企業でのお話ですが、こちらの社長は何事にも非常に行動が早く、しかもビジネス上の判断はいつも的を得ていて適切です。外から見ているととても有能で立派な経営者なのですが、どうも社員との折り合いが今一つよくありません。

人事、組織の仕事に関わる私の立場としては、当然その理由は気になります。しかし、社員の方々からお話をうかがってみても、仕事上での不都合や不信感という話はほとんど出て来ず、今一つ事情がつかみきれません。

そんなある日、こちらの会社で催される宴会にご招待頂く機会がありました。実はそこでの社長と社員の方々の様子を見て、今一つスムーズでない関係の理由が何となくわかることがありました。

この社長さん、とにかく「待つ」ということができないのです。私はせっかちとは少し種類が違うと感じたのですが、例えば宴会の集合時間のかなり前から、「まだ行かないのか」「もう出よう」などといろいろな人に声をかけ始めます。普通に間に合う出発時間まで待てません。

会場に着けば、予定時間の前から、「もうだいたいみんな揃っただろうから始めよう」などと幹事に談判しています。開始時間が待てないのです。
会が始まったら始まったで、注文したものが来るまで待てないなどということは言うに及ばず、周りの人が飲み物を飲み終わるのすら待てず、勝手に注文していたりします。面倒見が良いという見方もできますが、様子を見ている限りでは、やはりいろいろなことが「待てない」としか思えません。

思えば社員の皆さんは、社長のこの感じにいつも付き合わされている訳です。こういうことは一事が万事、同じようなことは数えきれないほどあったはずです。
どうりで仕事のことをヒアリングしても出てこないはずですし、これが原因で社長のことをうっとおしく、煙たく感じてしまい、距離を取ろうとしてしまうのは無理もないという気がします。
 
これは、仕事上では長所となっていた「行動力」が、人間関係の上では「待てない」という行動として現れ、それが短所となってしまっていたということです。場面の違いでその人の特性が正反対の形で出てしまった一例で、なおかつその差が極端だったということでしょう。

長所と短所は裏表であるということ、そしてこのことは自分なりに意識しておかなければいけないということを、あらためて思った一件でした。


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