2014年10月17日金曜日

「私が強いのではなくあなたが弱すぎる」という言葉


ある法事でうかがったお寺のご住職がお話になっていたことです。

ご住職は将棋が好きで、よく将棋を指すのだそうです。ただ、本当に弱くてなかなか勝てないのだそうです。
ある日も将棋を指していて、相変わらずのように負けてしまいました。対局後のお相手に、「やっぱり私なんかではかないません。お強いですね」と声をかけたところ、お相手から返ってきた言葉は、とうとう言われてしまったという感じの図星の言葉だったそうです。

「いや、私が強いのではなくあなたが弱すぎるんです」

自分としてはさすがにショックで、その言葉に反応できずにいると、お相手から続いて出てきた言葉に少し救われる気がしたそうです。

「私もあなたとは大差が無いくらい弱いです。でも私の方が少しだけ自分の弱さを知っていて、それをカバーする術を知っていたということでしょうね」

ご住職は、「人間は自分の弱みを人に見せるのは怖いから、それをできるだけ隠そうとする。人の上に立つ人は余計にそういうところがある。しかし、自分の弱みに向き合ってその弱さを知り、場合によっては他人に頼ることができるのも、その人の強さになるのではないか」と思われたそうです。他人に頼るのが意外に苦手な私としては、ちょっと腑に落ちた感じがしました。

なかなか良いお話でしたが、このお話から私なりにもう一つ思ったのは、「客観的な自分の現在位置」を知ることが大切ではないかということです。

特に将棋のような一対一の勝負では、目の前の相手との「相対的な強さの争い」になります。仮にその相手に連戦連勝などとなれば、「自分は強い」「自分は優れている」などといううぬぼれが出てもおかしくはありません。

しかし、そういう狭い世界の勝ち負けだけで自分のレベルがわかったつもりになっていても、実はその対戦自体のレベルがものすごく低い可能性があります。ビジネスの中でいえば、特定のライバル会社との関係や、内輪の社員同士の競争などで起こりがちになるようなことです。

これを避けるための方法というのは、「いろんな相手と勝負してみること」しかないのだろうと思います。「相対的な力関係」を積み重ねることで、徐々に「客観的な自分の現在位置」がわかってきます。そんな積み重ねや経験があって初めて、自分の強さと弱さもわかってくるのではないかと思います。

競争しろ、勝負しろと、ただ一方的に煽るつもりはありませんが、「客観的な自分の現在位置」「自分の強さ弱さ」を知るためには、競争も勝負もある程度必要なことなのだろうと思います。


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