2014年9月26日金曜日

今のままではかみ合いそうにない残業代の議論


「残業代を求める若者は社会をなめているのか?」というウェブ記事を見ました。

日本生産性本部他の団体が、2014年度の新社会人を対象に実施した「働くことの意識」調査での「残業についてどう思うか」という質問に対して、「手当がもらえるからやってもよい」と答えた若者が約7割と過去最高だそうです。一方で「手当にかかわらず仕事だからやる」は下降線をたどっていて今回は2割ほどにとどまったそうで、「残業はいとわないが、それに見合った処遇を求めている傾向がうかがえる」とする報告をまとめています。

これに対してネット上などでは、「給料をもらえない分まで仕事する意味がわからない」などの意見がある一方で、「残業代が欲しいなら、残業代が払えるほど利益を会社に与えろ」「まだロクに仕事も覚えてないのに…」「社会なめすぎ」といった意見もあったようです。
私は残業代は法律で認められたことですし、働かせなければ払う必要がないことなので、新入社員が残業代をもらうことが社会をなめているとは思いませんが、人によっていろいろな捉え方があるようです。

ここ最近は、再びホワイトカラーエグゼンプション(いわゆる労働時間規制の緩和)の話も進みつつありますが、具体的な話になればなるほど、残業代に関する認識は、経営者と労働者の間でさらにギャップが深まっている気がします。

私は人事という立場に関わってきましたので、残業に関する問題は常に身近にありました。
残業代に関する話でいつも思っていたのは、どんな人に聞いても「自分以外の誰かの働き方に問題がある」という話になってしまうことでした。

経営者の場合は、「残業するのは仕事の効率が悪いからだ」「必要な残業があるのはわかるが、それも含めた総合的な成果に対して報酬を払うべきだ」などとおっしゃる方がほとんどです。「だらだら時間ばかりかけて仕事をする奴に余分な給料なんて払いたくない」というのが本音ではないかと思います。

経営者自身が時間換算で働くことは基本的にありませんから、「労働時間に応じた報酬」という考え方自体が受け入れがたいようで、今の経営者団体の労働時間法制に関する主張も、ほぼ同じようなニュアンスを感じます。

この話を社員に向けてみると、やはりほとんどの人は、「ムダな残業はするべきでない」「仕事ができない人間の給料が増えるのは納得できない」と言います。
そして「大した仕事もないはずなのに、何で毎日遅くまで残っているのか」「生活残業ではないか」などと他人の仕事ぶりを指摘しますが、そんな人に「では自分は・・・?」と問いかけると、自分自身が非効率な残業をしているという人はまずいません。他人の残業は生活残業や非効率な残業で、自分の残業は仕事量に応じたやむを得ない残業ということのようです。

こうやってみると、経営者の主張も、社員の指摘も、どうも「自分以外の誰かが悪い」と言い合っているだけに思えてしまいます。また、自分の立場中心の話ばかりをしている感じがします。
残業代など払う気もないブラック企業も、非効率な働き方で残業代を稼ぐ社員もいるでしょうが、それは一部に限られた話です。しかし、こんな極端な例も含めて、経営者と労働者がそれぞれ都合の良い解釈で、良いとか悪いとかという話をしています。
今のままで話を続けても、きっとかみ合わずに中途半端な落としどころで終わってしまうように思います。

経営者が経営効率を求めるのは当たり前ですし、労働法で決まっている通りの残業代を払うことも、これまた当たり前のことです。ただ、お互いの利益主張ばかりでなく、もう少し建設的な議論ができないものかと思います。


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