2014年9月10日水曜日

「企業の人事戦略」に見えてしまう過去からの先入観


このところ、人が採れない、人手不足とおっしゃる企業が急に増えてきました。
そのための人件費高騰、人が集まらないことによる店舗閉鎖や売上減などにより、人手不足倒産という話も聞こえ始めています。

そんな中でも、企業から出てくる求人要件を見ていると、業種や職種を問わず、年齢でいえば20代後半から30代前半までの若手人材を求めていることがほとんどです。まぁ相変わらずといえば相変わらずです。

私の出身業界ということで関わることが多いIT系の企業でもこの傾向が強く、シニアの技術者は「顧客にあまり歓迎されない」「扱いづらい」「コスト高である」などという話が良く出て来ます。
会社側の本音も、シニア人材を活用するというよりは避けたい意識の方が強く、結局求めている人材像の大半は、「5年以上の経験がある若手技術者で、できれば男性主体」という画一的なもののようです。

いろいろな企業の方々に人材に関する話を聞くと、「現状の男女比を大きくは変えたくない」「年齢構成をピラミッドで保ちたい」「できれば新卒中心で」「できれば男性で」など、旧来からの価値観で話される方はまだまだ多いです。
ただ、日本の少子高齢化、人口減少というマクロ的な状況を考えれば、これらを維持していくのは相当に困難なことです。

このあたりの対応策として、女性やシニア世代、外国人の活用などが言われますが、では思ったらすぐできるのかというと、事はそれほど簡単ではありません。、

例えば、子育て世代の女性では、就業可能な時間に制約がありますし、子供の急病などで突発的に休まざるを得ないこともありますから、仕事自体の分業と組織内でお互いがフォローし合う体制づくりが必要になります。属人的な仕事のやり方では立ち行きません。

シニア人材であれば、これまで培った経験をどのように活かしてもらうかという観点になりますから、どんな役割を期待し、実際にどんな仕事をやってもらうかという業務内容とのマッチングが重要になります。そうでなければ、単に期待外れというレッテルが貼られてしまいます。

外国人の場合は、言葉の壁や文化の違いがありますから、それらを理解した上での労務管理やマネジメントなど、それなりのノウハウが必要です。軌道に乗るまでには相応の時間もかかるでしょう。

他にも、大企業ではバブル期の大量採用に起因して、シニア世代の人余り状況がありますが、他企業への人材シフトはなかなか進みません。比較的高額な報酬、職務経験と期待値のミスマッチ、本人の意識が伴わないなど、原因は一つではありません。

こんな状況を見るにつけ、これからの企業の人事戦略は、これまで自社で考えていた常識から脱却し、発想を大きく切り替えていかなければならない時期なのだと思います。
これまでなんだかんだと理由をつけて受け入れてこなかった人材を、どうやって受け入れ、活かしていくかを考えなければ、人手不足はますます進んで行くでしょう。

これからは選別するというより、どんな仕組みを作り、どんな教育研修を施し、どんな仕事を与えていけば戦力化できるのかを考えていく必要があると思います。人材の流動化、再配置という企業の枠を越えた取り組みも必要でしょう。

「企業の人事戦略」に関わる方々が、まずは率先して発想を切り替えていくことが必要になっているのだと思います。


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