2014年8月11日月曜日

良いことばかりではないと思う「研修制度の充実」


採用活動のように、特に対外的な自社のアピールが必要な場面では、「整った研修制度で能力を伸ばすことができる」など、「研修制度の充実」を挙げる会社をよく見かけます。
また応募者の側も、特に新卒の学生さんなどの場合では、「研修制度の充実」会社選びの条件とする人は多いように思います。

「教育環境が整っている中で教えてもらいたい」「優秀な上司に自分を成長させてもらいたい」など、自分の能力が少しでも早く伸ばせる環境がある会社が望ましいと考える気持ちはよくわかります。充実した制度を活用して少しでも早く成長ができれば、それは会社にとっても良いことですし、自分のためにもなります。

ただ、そういうことを望む人に限って、入社してから自分で努力するかというと、あまりそうではないことが多いように思います。与えられる課題に対してそれほど積極的に取り組む訳ではなく、かといって何もしない訳でもなく、学生時代と同じようにとりあえず単位が取得できる60点程度が取れればよい、そんな感じの取り組み方です。

これがなぜかを考えてみると、会社に対して「研修制度の充実」を求めているということは、心のどこかの本音の部分で、「自分の仕事は誰かが教えてくれるもの」「自分の能力向上は会社から与えられるもの」という受け身の姿勢、人任せの気持ちがあるのではないかということです。そもそも自己の力で成長していこうという意識が乏しいとも言えます。

これは、会社に研修制度が不要と言っている訳ではありません。会社として教えるべきことはきちんと教える必要があり、そのための環境作りは絶対に必要です。

その一方で、研修などの形でカリキュラム化して教えられることは、仕事の中でも一部のことに限定されます。実務でなければ経験できないことも、一度は失敗しなければわからないこともあります。何でもかんでも他人が教えられる訳ではありません。

また会社はただ学ぶための場ではないので、結果と育成のバランスを取る必要があります。新しい経験をさせるにしても、会社として痛手を負うような致命的な失敗はさせられません。
本人に何をどの程度やらせるかを判断する上で、ただ言われたことだけしかやらない受け身の姿勢の者では、自分から発信する力やチャレンジする意識が弱い傾向があります。そうなると今の能力を超えるような仕事は任せづらく、結果として経験できる仕事の幅や難易度は抑えられ、自分が成長する速度は遅くなっていくでしょう。

会社が「研修制度の充実」を売り物にするのは、悪いことではありません。また応募者や社員が、会社に対して「研修制度の充実」を求めるのも、これまた悪いことではありません。
ただそこには、自分の力で学ぼうとしない、「会社から与えられるもの」という意識を助長している可能性があります。

充実した制度には、必ずそれにぶらさがる者が出てきます。「研修制度の充実」も、決して良いことばかりではありません。現状がどうなのか、よく注意する必要があると思います。


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