2014年6月30日月曜日

「在宅勤務はやりたくない」と言っていた男性たち


消費者庁では全管理職26人が、7月から週1日、自宅で勤務をすると発表しました。子育てや介護中の職員が在宅勤務をしやすくなるように、管理職の理解を広めるのが狙いで、「企業にワークライフバランスを推奨している霞が関から手本を示したい」ということだそうです。

特に震災直後のことですが、事業継続計画(BCP)との関係もあって、在宅勤務の導入を検討する企業が増えてきて、私もそのために必要な人事制度のセミナーなどを依頼されたことがありました。

その際にいろいろ調べていた中で、「在宅勤務をやりたいか?」という調査をした結果があり、そこでは「制度があれば利用したい」が約4割、「制度があっても利用したくない」が2割、「わからない」が4割と、みんながそれほど前向きにやりたいと思っている訳ではないというデータがありました。

当時、私のセミナーに参加された方々にも同じことを聞いてみましたが、特に男性の半分近くは「やりたくない」との答えで、どんどん制度導入を進めていけば良いと思っていた私の考え方とは、どうも違う傾向のようでした。

なぜやりたくないのかの理由を聞いたところ、「家で仕事をしても集中できない」など、仕事とプライベートのケジメがつけづらいという話は当然ありましたが、「平日の昼間まで家族と顔を突き合わせているのは息苦しい」とか、「“会社に行く”という、出かけるのに最も正当な理由を放棄するのは嫌だ」など、仕事そのものとはあまり関係がない理由をおっしゃる方が結構いらっしゃいました。

こういう理由を述べる人のほぼ100%が男性で、これに対して女性の方は、「在宅勤務ができるならばやりたい」と前向きにとらえる人の方が、過半数を超えて多いという状況でした。ただ男性ほどではないにしても、やりたくないと答える人はやはりいらっしゃいました。

昨今の状況では、IT環境の進歩に伴って、在宅勤務を実施するためのハードルは、以前に比べて圧倒的に低くなっています。はっきり言って週に1日や2日の在宅勤務であれば、その気になりさえすればすぐに実施できる環境にあると思います。

ただ、在宅勤務の導入が思いのほか進まないのは、制度や技術の問題よりも、働く人たちの「職業観」の問題の方が間違いなく大きいのではないかと思います。

未だに多くの管理職は、自分の部下が物理的に目の届く範囲にいなければ管理しづらいと考え、部下も何かあったらすぐ話せる場所に上司がいた方が良いと考え、お互いにフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションでなければ本音が伝わらないと考え、仕事をする「場」をともにすることが必須であると考えていたりします。

こういう部分はもちろんあるので、それを否定はしませんが、例えばグローバルな環境でビジネスをしている会社では、働く場所も時間帯も異なるメンバーたちと一緒に仕事をしていかなければなりませんし、スピード重視の場面であれば、何でも現地に移動してやるという訳にもいきません。いつまでも昔ながらのやり方で、時間や場所を共有して仕事をしようとするばかりでは、だんだん立ち行かなくなってきています。

在宅勤務の導入可否が、働く人の「職業観」の問題が大きいとすれば、今回の消費者庁のように、「まずは無理やりにでもやらせる」ということも必要なのかもしれません。

在宅勤務のメリット、デメリットを実際に経験してみることで、これらの制度を前向きに活用していこうという「職業観」に変わっていけば良いのではないかと思います。


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