2013年10月28日月曜日

使い方が見直される「年功序列」


最近あらためて「年功序列」を見直し、うまく活用しようという動きが、一部の企業の中に出てきています。

例えば、入社後10年間は、会社として必要なスキルと経験を身につけてもらう期間として位置づけ、昇格スピードに差はつけずに社内で経験を積んで行ってもらい、社内での競争はその後からというようなことをしています。会社として10年の育成期間を設けるということですが、その間でも短期的な成果は、賞与で差をつけて反映するのだそうです。

かつては悪しき制度の象徴のように言われた「年功序列」ですが、世の中の仕事で、年月を経ていく中で身につけていくスキルや経験、すなわち年功的な要素が一切関係ない仕事というのは、たぶんほとんどないと思います。新しい発想、新しい技術、新しい方法だけがすべてということはないでしょう。

年令は関係ないと言いながら、年令相応の経験値というのは確実にありますし、周りからはそういう要求もされます。スキルや経験と年令は、正比例の関係ではありませんが相関性はあります。

かつての「年功序列」は、それが第一優先の基準だったため、生み出した成果や保有能力にかかわらず、ただ年令が上だというだけで、給料も役割も役職もみんな上というものでした。

その反動で成果主義への移行がありましたが、今度はそれを重視しすぎたため、中長期の経験の積み重ねで得られる経験知や暗黙知(言葉では表しづらい知識)が軽く扱われるようになりました。中高年層を中心にしたリストラなどで、現場が回らなくなってしまう企業がたくさん出てきました。

体力、記憶力、新しいことへの適応力や吸収力といった、年令とともに衰えていく能力がある一方、人脈、応用できる事例、経験を積むことによる引き出しの数や中身、その他いわゆる人生経験は、年令とともに増えていきます。これらをすべて足し算したものが、仕事をしていく上での「総合力」ということです。
この「総合力」は、衰えるものを積み上げるものが上回れば、年令を問わずに本人の意識次第で増やしていく事ができます。

経験値や暗黙知も含む仕事の「総合力」に注目すると、人材育成というのは中長期で考えて行くことが必要になります。「経験する」「場数を踏む」ということも、それを繰り返していくことも育成には必要であり、そのためにはある程度の時間が必要です。

そんな事を考えると、「年功序列」も、適度な意味であれば必要な考え方ではないかと思います。


0 件のコメント:

コメントを投稿