2017年1月23日月曜日

現場作業を見下すマネージャーが中小企業に転職してからのこと



数年前のことですが、以前に何度かお会いしたことがある、まずまず大きな会社のマネージャーだった人から転職したという案内をもらいました。転職先はそれほど大きな会社ではありませんでしたが、執行役員の肩書がついていましたので、それなりに望まれての転職なのでしょう。

私は何度かビジネス上のつながりがあっただけなので、くわしい人物像まではわかりませんが、どちらかと言えばイケイケな感じがする、悪く言うとそれが尊大な態度に見えてしまうようなタイプの人でした。私の印象では、仕事のしかたが大ざっぱに見える人で、実際に期限を守らない、依頼事項を忘れる、ケアレスミスなど、少々雑なところがありました。

私がその人の発言で特に気になっていたのは、現場作業や事務仕事を「誰でもできる仕事」などといってかなり軽視していたことです。
「上位の職制の者ほど、自分しかできないことに時間を割かなければならない」と言われることからすればわからなくはないですが、本来は自分でやらなければならないようなことであっても、現場作業や事務仕事のたぐいは何でもかんでも部下に押し付けるようなところがありました。
たぶん、そういうことがあまり得意でなかったのでしょうが、軽視して見下すような態度は好ましいとは言えません。押しの強さが上司からは頼もしく見えるのでしょうが、部下たちからの評判はあまり良いとはいえないようでした。

案内をもらってから何か月かが経ったある日、そのマネージャーが転職前に在籍していた会社に、たまたま訪問する機会がありました。新たな担当者と話しているうちに何となくそのマネージャーの話になり、その担当者が聞いた風の噂によると、転職先の会社は早々に辞めることになってしまったらしいということです。それも退職勧奨のような形で半ば追い出されてしまったようだということです。

どうも「自分のことを自分でやらない」という評価だったようで、それが無責任、人任せ、何もしないといった見られ方になり、結局辞めざるを得なくなってしまったようです。

私はこの話を聞いて、「ああやっぱり・・・」という思いを強く感じました。
特に大きな組織の出身者が中小企業にいってまず思うことは、「こんなことまで自分でやらなければならないのか・・・」ということだそうです。
分業が進んでいる大企業では、「本人の知らないうちに誰かがやってくれていること」が思いのほかたくさんあり、社員を手厚くフォローできる体制が整っていますが、中小企業ではそうはいきません。会社によって差はありますが、自分の身の回りのことは自分でやるのが基本です。

そんな手厚い大企業にいることでようやく成り立っていた人が中小企業に転職すれば、見下していた現場作業や事務仕事を、「やらなくても当然」の文化から「やって当然」の文化に変わる訳ですから、そのカルチャーショックは相当だっただろうと思われます。逆に自分が見下されるようになってしまったかもしれません。

最近の求人要件として、年令を問わずに「自分で手を動かせる人」「実務がこなせる人」という項目が挙げられることが多くなりました。ただ「管理ができます」ではダメで、営業であれば実際の営業活動、経理であれば台帳入力などの経理事務など、現場のプレイングをこなした上でのプラスアルファが要求されるようになっています。

現場作業を軽視する姿勢では、通用しない職場がどんどん増えています。「たかが事務作業」「誰でもできる仕事」などと言って避けていることで困るのは、実は自分自身ということです。
目の前の実務を誠実にきちんとこなすことは、自分のためにも必要なことなのだと思います。

2017年1月20日金曜日

どんどん増える「コミュニケーションツール」を使い分ける難しさ



夕方のあるカフェでのこと、比較的すいた店内で、隣にいた若いサラリーマン風の男性がいろいろな会社に何本も電話をかけています。

取り次ぎを求める相手はほとんどが社長ばかりで、ずいぶん豊富なコネクションがあるのだと思っていましたが、次から次へとかける先で取り次いでもらえることがほとんどありません。なんとなく不思議な感じがし始めていていたところ、ある一件にようやく取り次がれて話している内容は、人材サービスのセールスでした。どうもリストを見ながらテレアポをしていたということのようです。

そういう仕事を公の場所でやってしまうこと自体の問題は感じますが、それはひとまず置いておいて、今までは会社の中やテレアポ専用の場所でしかできなかったことが、社外でもリストがアクセスできるようになり、場所を問わずに自分の都合でできるようになっているということです。
それと同時に感じたことは「やっぱり営業はなんだかんだ言っても電話なのだ」ということです。

これは私も経験したことがありますが、何度も何度も営業電話をかけてくる会社の商材が「ウェブマーケティング」だそうで、「自社のマーケティングはウェブではやらないのだ・・・」という笑い話のようなことがあります。
自分にとって不要な営業電話がうれしい人はいるはずもなく、逆にそういう一方的なアプローチを嫌がる傾向は年々強まっているように感じますが、ではメールや広告といった他の方法でうまくいくかというと、物が売れない時代ではなかなか成果につながらず、結局は直接話してプッシュ営業ができる電話が中心になってしまっているのかもしれません。ただ、私はかえって顧客を遠ざける要因になっているのではないかと心配してしまいます。

これとは反対に、社内のコミュニケーションが、なんでもかんでもメールに置き換わっていると問題視する話が少し以前にありました。隣の席同士でもメールでやり取りしていて直接話そうとしない、それはおかしいという批判的な意見です。
ただ最近は、あまりこういうことを言わなくなったように思います。その理由は、メールを使うメリットが共有されてきたことや、適切な使い方がされるようになってきたからだと思います。

私も仕事上のやり取りで基本的なことはメールが中心、それ以外にもフェイスブックのメッセンジャーやLINEや、その他のチャットツールなども使い分けます。
なぜかというと、やり取りがすべて記録に残って、“言った、言わない”の話になったり、忘れてしまったりということがきわめて少なくなるからです。メールの洪水に陥りかねないので、読み飛ばすものも相当ありますが、やり取りが後々まで確認できるということは仕事を進める上では重要です。
そういうことを踏まえて、所要時間や情報共有する人数や、伝えることの量や内容によって、いくつものツールを使い分けています。

インターネットがなかったような時代は、「郵便」「ファックス」「電話」「会って話す」くらいしか選択肢はなかったわけですが、そこに「メール」が加わったのがたぶん画期的なことで、そこから用途の異なる様々なコミュニケーションツールが出てきました。最近は音声入力が進歩して入力の面倒さも減っていますし、これからも新しいものがどんどん出てくるでしょう。

その一方、若い人たちの間では「手書き文字が温かい」「気持ちが伝わる」などと言って、手書きの手紙を写真で撮ってメールで送るなど、昔と今が融合したような使い方もされていると聞きます。

ビジネスの場では、コミュニケーションツールが多くなりすぎて、使い分けが難しくなっていることは確かです。そのせいで、特に「新しいものを追いかけるのは苦手」という人たちは、食わず嫌いで拒否していることも多いのかもしれません。こんな私でも、流行りものが面倒に感じてしまうことはあります。

ただ、これからの時代はそれでは損をしてしまうことが多いように思います。
効率的に仕事をするためには、どんなものでも「新しいものはとりあえず使ってみる」ということが必要ではないでしょうか。

2017年1月18日水曜日

「ゆでガエルにヘビを放り込む」があまりうまくいかなかったこと



あるウェブ記事の見出しに「ゆでガエルの意識を変えるのは簡単だ。ヘビを放り込めばいい」とあるのを目にしました。三菱ケミカルHD会長の小林喜光氏がおっしゃったことのようです。
記事を拝見すると、「ヘビを放り込む」は決して人を入れるということばかりでなく、“事業方針の転換”というようなことも含んでいて、なるほどその通りだと思います。

ただ、私が実際に現場で体験することでは、「ヘビ」になるのは今まで自分たちの組織にはいなかったタイプの人材、社外の専門人材や優秀人材を指していることが圧倒的に多く、その人たちが短期間で劇的に組織変革をしてくれるというような救世主の働きを期待しています。

それが期待通りに進むケースはあるにはありますが、それほどにはうまくいかなかったケース、さらにはまったく期待に反していたようなケースの方が、実は多いと感じます。

これはある会社でのことですが、その組織にとっては「ヘビ」に相当する、今まで自社にいなかったような経験を持った優秀な部長クラスの人材を採用したものの、それによって社内の「ゆでガエル」と言われていた人たちが、“敵の襲来”と察知してちょっと違う意味で目を覚まし、その部長を徹底的に攻撃して退職に追い込んでしまったということがありました。
「窮鼠(きゅうそ)猫を噛む」などということわざがあるように、弱い者でも追いつめられたり集団になったりすると強い者に反撃することがあるという典型の状況でした。
この団結力や執着心が仕事に向かえばどんなに良いかと思いますが、この時の学びは「どんな優秀な人材であっても“多勢に無勢”では変革が難しい」ということです。

また、これは別の会社でのことですが、やはり同じように「ヘビ」となることを期待した人材が、次第に周りに飼いならされて、結局同じゆでガエルの状態になってしまったということがありました。周囲からのフォローがなかったことも大きな要因ですが、たぶん、ヘビだと思った人材が実はそうではなかったということで、人材の見込み違いという問題があったのではないかと思いました。

このように「ゆでガエルにヘビを放り込む」とはいうものの、その人が本当にヘビになるのかどうかの見極めも必要ですし、仮にヘビであったとしても、一匹だけでは負けてしまうこともあるということで、これらの条件を満たすのは意外に難しいように思います。

タイプの違う人材を入れさえすれば、起死回生、一発逆転の変革ができると考えてしまう経営者はたくさんいます。ただ、そんな孤立無援の状況で力を発揮できる人は、ごくごく一部の少数派です。
その人材のレベルを見極め、孤立しないような組織体制を作り、周囲からもフォローをしていかなければ、せっかくの「ヘビを放り込む」が効果的にならないことが多々あります。

組織変革に起死回生も一発逆転もないことだけは、心に留めておく必要があるのだと思います。